何してんだ ３ ページ34
八乙女「伊野ちゃんは、何をそんなに怯えるの？」
思わず口からこぼれ落ちた言葉。
八乙女には伊野尾が無駄に突っかかって来ることも、他人を頼らないようにしていることも虚勢を張っているようにしか見えない。
おにぎりを美味しそうに頬張る伊野尾。
他愛ない話しにケラケラと肩をゆすりながら笑う伊野尾。
悪いことをしたと思った時は素直に謝る伊野尾。
本当の伊野尾は誰よりも優しくて繊細なんじゃないのかって…
伊野尾「くっ…」
伊野尾が泣きそうな表情で唇をぐっと噛みしめる。
山田はそんな伊野尾を優しく包むように抱きしめる。
あえて顔は見ないように。
山田「伊野ちゃん、話して。なんかさ、ほっとけないんだよ。まだ、出会ってほんの少しで、何言ってんだって思うかもしれないけどさ…」
伊野尾は山田に不意に抱きつかれて驚いたが、体いっぱいに伝わる山田の温もりと優しい声に、我慢していた涙が目尻からぽろりと一粒流れる。
伊野尾「ダッ……ダメだよ………。俺と関わったら……みんな不幸になっちゃうもん……」
伊野尾の声が震えている。
山田「大丈夫。俺達、強いから。」
山田は優しく微笑みながら、慰めるように伊野尾の頭を撫でる。
伊野尾「もう…嫌なんだよ…。俺のせいで……お…れの……………ぐぅっ……………う゛ぅ………うっ………うぇっ………」
伊野尾が山田の胸に顔を埋め、声を殺しながら泣いている。
そして山田の背中に回された伊野尾の手は、山田の服をぎゅっと握りしめることで湧き上がる感情を抑え込もうしている。
それでも、溢れる涙を堪えることが出来ず、伊野尾は苦しそうに嗚咽する。
山田は尚も優しく伊野尾の頭を撫でながら慰める。
山田「大丈夫……大丈夫……」
それはまるで泣きじゃくる迷子の幼い子どもを安心させるように。
どれくらい時間が過ぎただろう。
山田の胸に顔を埋めていた伊野尾が、大きな深呼吸を１つした後、ゆっくり顔を上げた。
目の周りと鼻の頭が赤くなり、鼻をグズグズと啜る姿は本当に幼い子どもに見える。
山田「伊野ちゃん、落ち着いた？」
伊野尾はコクンと頷く。
そして……
伊野尾「山田…薮…光…。話し聞いてくれる？うまく…話せないかもしれないけど……」
まだ迷いを含むその瞳は、山田達の反応を一つ一つ確かめていかのよう。
そして恐る恐る言葉を選んで話しだす。
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作者名：サツキ | 作成日時：2023年11月7日 19時
