何してんだ ２ ページ33
恐らく山田と伊野尾のことが心配で診療所のすぐ外に居たであろう八乙女が血相を変えて飛び込んでくる。
よく見ると床に倒れ込んだ伊野尾の頭から血が滲み出て、僅かに血溜まりが出来ている。
八乙女の盛大に驚いた声が入院部屋に響きたる。
これでもかってぐらいに頭に包帯をぐるぐる巻きにされた伊野尾が患者用の回転椅子に座ってしょげている。
後頭部がパックリ割れて３針ほど縫う怪我。
頭ということもあり、怪我の程度より大袈裟な出血。
いつも優しい八乙女の顔がプンプンと怒っているのが伝わる。
しっかりと縫ってはくれているが、その他の処置は心無しか雑なのは気の所為ではないと思う。
八乙女「なぁ〜んだ。伊野ちゃんホントは退院したくなかったんだね〜。こんな怪我までして、入院延ばそうとしなくてもいいのに。」
ニッコリと笑って話す八乙女だが、目は全く笑っていない。
そして、無駄に優しく話しをされるのが逆に怖い。
伊野尾は何も言えず、タラタラと冷や汗を垂らしている。
バンッと勢いよく診療所の扉が開く。
鬼の形相の薮が診療所に入って来る。
薮「伊野尾〜っ。」
伊野尾「薮まで来た〜ぁ。」
伊野尾は情けない声を上げて泣きそうだ。
山田「伊野ちゃん、逃げたほうがいい！」
山田は薮の後ろから必死で伊野尾に呼びかける。
薮「伊野尾。話しは山田から聞いた。散々悪態ついといてざまぁ〜ねぇ〜なぁ。」
伊野尾「ひぇ〜💦ごめんなさい……」
ものすごく威圧感のある皮肉に謝るしかない。
薮「ったく。怪我は大丈夫か？」
伊野尾「うん…。光が縫ってくれた。………ねぇ、俺の流れた血、どうした？」
薮「はっ？血？」
八乙女「床の？拭いたよ。」
伊野尾「それだけ？」
八乙女「？」
八乙女は理由がわからず首を傾げる。
伊野尾「いや、俺の血だよ。何も思わないの？」
八乙女「あっ！そういうことか。」
八乙女がぽんっと手を打つ。
薮が大きなため息をつく。
薮「お前なぁ……俺達はお前の血をどうこうしようなんて思わない。何だ………その……お前が生きるの嫌になったのは、それが原因か？」
伊野尾「………まぁ〜。原因ではある……かな……。」
伊野尾が視線を床に落とし、ぎゅっと右手で左腕のカーディガンを掴む。
よく見ると、その手が小刻みに震えてることに山田が気づく。
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作者名：サツキ | 作成日時：2023年11月7日 19時
