何してんだ １ ページ32
山田は納得いかない表情でむくれている。
伊野尾「ごめん。ごめん。」
伊野尾はひと通り笑い転げた後、ポンポンと山田の頭を撫でる。
そして、ベットから立ち上がると、落ちているTシャツを拾い上げて着る。
伊野尾「こんなに笑ったの、久しぶり。」
Tシャツ姿の伊野尾が山田に優しく微笑む。
目にはまだ涙の膜が張っている。
山田「なぁ〜。お前、名前何ていうの？」
山田は不意に伊野尾を真っ直ぐに見つめて聞く。
伊野尾「はっ？何を今更。」
伊野尾は首を傾げる。
伊野尾「名前なら光や薮から聞いてるでしょ？」
山田「俺はお前からちゃんと聞きたいの！」
山田が語気を強めて言う。
伊野尾はフッと笑うと、改めて山田に向き合う。
伊野尾「俺の名前は………」
もったいぶる伊野尾。
ベットの上でぺたんと座り、体が少し前傾する山田。
伊野尾「薮宏太。」
山田がベットからずり落ちそうになるぐらい、盛大に前のめる。
山田「はぁ〜？！」
伊野尾「困った時は、人の名前を借りる！」
ドヤ顔でとぼける。
山田「ふざけんなっ！今何にも困ることないだろっ！」
伊野尾「いやいや、困ったよ。こんな半裸状態で自己紹介させられるんだぜ。」
Tシャツの裾を両手で引っ張り、膝をがに股に曲げて変なポーズをキメる。
山田「ズボン履けよ！」
山田がベットの上のデニムを伊野尾に投げ付けてそっぽを向く。
山田は背後で伊野尾がデニムを履く気配が感じている。
山田「ったく！お前はさ〜…」
山田の文句を遮るように伊野尾が背後から抱きつく。
そして、山田の耳元で囁く。
伊野尾「伊野尾 慧だよ。助けてくれて、ありがとう。」
山田が驚いて囁かれた耳を手で塞ぎながら振り返る。
そこには伊野尾の優しい微笑むの顔が直ぐ側にある。
山田「つっ！」
かぁ〜っと赤くなる山田の顔。
山田「近いっ！！」
山田が勢いよく伊野尾の両肩を押す。
伊野尾「おわっ！！」
伊野尾は盛大によろける。
ガッシャーン！！！
伊野尾が後ろに倒れた拍子にベットの柵に角に後頭部を激しく打ち付け、近くあった点滴を掛ける器具も倒れる。
伊野尾「痛って〜……」
伊野尾は頭を抱えて床に体をくの字に丸めて転がる。
山田「えっ？！伊野ちゃん？？大丈夫？」
八乙女「何っ？今、凄い音しなかった？大丈夫？って、えぇ〜っ？！」
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作者名：サツキ | 作成日時：2023年11月7日 19時
