最後の日だから ３ ページ31
山田「何、盛ってんだよ。」
突然、割って入った山田の呆れたような声。
伊野尾「(薮といい、山田といい、間の悪い時に入ってくる。)」
伊野尾はそんなことを考えながら目だけを山田に向ける。
その隙に八乙女が、ぐっと両手で伊野尾の体を押し返す。
伊野尾はヨロヨロと２〜３歩後退る。
山田「薮に見られたら激オコじゃ済まされないぜ。」
山田はスタスタとベットに近寄るとTシャツを手に取り、側で俯きながらたたずんでいる伊野尾の頭に投げ引っ掛ける。
尚も微動だにしない伊野尾。
山田「ねぇ。そんなにしたいならさ、俺が買うよ。あんたのこと。」
伊野尾「はっ？」
伊野尾は頭にTシャツを引っ掛けたまま、眉間にシワを寄せなが顔を上げた。
山田「俺がお前を買うって言ってんの。」
山田がポケットから財布を取り出し、壱万円札を数枚出してピラピラと仰ぐ。
山田「ヒカ、ちょっと席外して。」
山田は、顔だけを八乙女に向けて言う。
八乙女「わかった………」
八乙女はこの場を山田に託すように頷くと、足早に診療所から出ていった。
山田「さぁ、遊ぼうか。」
山田は伊野尾の手を取ると、ぐいっと自分の方に引き寄せる。
伊野尾の頭に引っ掛かっていたTシャツがずり落ちる。
山田は右手で伊野尾の左手首を掴み、左手は伊野尾の後頭部に回す。
そして、そのままベットに伊野尾を押し倒す。
伊野尾は表情を変えることなく、されるがままだ。
山田「・・・」
伊野尾「？」
山田「・・・」
伊野尾「山田？」
山田「・・・」
伊野尾をベットに押し倒して組み敷いたまま固まる山田。
伊野尾「山田…お前………
……男、抱いたことないだろ？」
核心を突かれたのか、山田の顔がかぁ〜っと真っ赤になる。
そして、右腕を口元に持っていき真っ赤な顔を隠そうとする。
その姿があまりにも滑稽で可愛くて……
伊野尾「ぷっ！あははははっ。めっちゃカッコつけてたのにっ……あははっ。固まってやんの！あははははっ。」
伊野尾はお腹を抱えてベットの上で転げながら大笑いをする。
山田「なっ！！おまっ！そんなっ！そんなに笑うことねぇだろ！」
山田は尚も顔を真っ赤にしたまま、焦ったようにまくしたてる。
伊野尾「ひ〜っ！あ〜も〜腹痛いっ！」
あまりにも笑い過ぎて涙が出たのか、伊野尾は右手の人差し指で右目を擦る。
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作者名：サツキ | 作成日時：2023年11月7日 19時
