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拾ったのは犬？猫？　２ページ4

住宅街から少し離れ、線路沿いに並ぶ雑居ビルと雑居ビルの間の小道に黒のワゴン車がバックで入っていく。

そして、雑居ビルの裏にスペースに止まった。

線路沿いはいい。

電車が通るたびに騒音やら振動やらが起きる。

そんなこんなで家賃もお値打ち。

こんな住みにくい場所に店だしたり、住んだりするのはよっぽどの変わり者か表立って商売できない輩。

だからちょっとやそっとやんちゃしても、ある意味暖かく見守ってくれる。

若干の治安の悪さはあるが、人情もある。

要は自由だ。

黒のワゴン車から薮が降りて後部座席側のドアを開けてやる。

山田は伊野尾の首元と膝の下に両手を滑り込ませると、お姫様抱っこで車を降りた。

山田「ありがと。」

薮「たくっ！」

薮は右手で自分の頭をくちゃくちゃと少し掻きむしった。

薮「俺は、犬は飼わないからな。」

山田「猫ならいい？」

薮「猫は光が怒る。」

山田「確かに。」

山田はニィ〜っといたずらっぽい笑顔を薮に向けた。

そんなやり取りをしながら雑居ビルの裏口から入る。

裏口入ってすぐに昭和感たっぷりの古いエレベーターがあり、それに乗り込むと３階へのボタンを薮が押した。

チンと音と共に３階に到着。

エレベーターから細くて薄暗い廊下を突き当たりまで進むとある扉。

扉には

「何でも屋ＪＵＭＰ」

という手作り感たっぷりのプラスチックの看板が掛けられている。

薮は扉を開けてやり、先には伊野尾を抱いている山田を入れてやる。

山田「ありがと」

薮「おう。じゃ〜そいつ、適当にソファにでも寝かせてやれ。」

薮が被っていた黒のキャップと黒のアウターを扉近くに置いてあるポールハンガーに掛ける。

黒の半袖Tシャツに黒の細身のデニム姿となった薮は部屋の一番奥に置いてあるステンレスのデスクのところへ行くと、ドカッと回転椅子に腰掛けた。

薮は、ふにゃ〜という効果音が聞こえてくるぐらいの笑顔を見せたかと思うと、鋭いナイフのような目をして睨んだ相手を震える上がらせる、一応この何でも屋の所長だ。

山田は伊野尾を事務所の中央あたりに設置してある３人掛けの黒い合皮が張ってあるソファにそっと仰向けに寝かせた。