検索窓
今日:31 hit、昨日:11 hit、合計:34,474 hit

素直に 2 ページ27

伊野尾は少しむくれて、じと〜っと八乙女を見る。

八乙女「何でもないよ〜。美味しそうに食べるなぁって思っただけ。」

伊野尾「お米好きなんだ。」

ふっと伊野尾が笑う。

八乙女「そっか。」

つられるように八乙女も笑う。

ただ、伊野尾はおにぎりをもう一口頬張ったところで申し訳無さそうな表情で手が止まる。

食欲がまだ無いようだ。

八乙女「いいよ。無理しなくて。薬は飲んで。」

八乙女はずっと伊野尾が握りしめたまま離さないおにぎりを優しく取り上げる。

伊野尾「あっ…うん…」

伊野尾はおにぎりを名残惜しそうに見ている。

きっと食べたいという気持ちはあるのだろう。

でも、体調が追いついていない。

八乙女「また作ってあげるよ。」

八乙女は伊野尾の反応に少し安心する。

食べたいって思うことは、気持ちが前向きになることに繋がるから。

伊野尾「うん。」

伊野尾はふっと嬉しそうな表情で微笑む。

八乙女「よっぽどお米、好きなんだね。」

八乙女は伊野尾の素直な反応に笑う。

確かに伊野尾はお米が好きなのだが、それ以上に誰かの温もりを感じるご飯を食べたのが久しぶだった。

でも、それはまだ八乙女達には知る由もない………

今は………………………



それから伊野尾の熱が下がり、退院の許可が出たのは3日後の朝だった。

この3日の間に薮は何度か様子を見に来たが、山田は1度も訪れていない。



八乙女「うん!オッケー。今日退院でいいよ。」

聴診器で丸椅子に座る伊野尾の胸の音を聞いた後、ニッコリと笑って八乙女が言う。

伊野尾「ありがと。」

少しはだけた患者着を整いつつ、伊野尾が礼を言う。

伊野尾は3日前とは丸っきり違い、顔色も艶肌も良い。

八乙女は伊野尾の回復を喜びつつ、一抹の不安がよぎる。

八乙女「ねぇ、伊野ちゃん…」

伊野尾「ほぇ〜?」

身なりを整え終わった伊野尾が顔を上げて八乙女を見る。

伊野尾の変化は体調だけではない。

ずいぶん表情も豊かになり、素直に感情を表すようになった。

少なくとも八乙女には。

八乙女「これから、どうするの?」

八乙女は伊野尾の目を真っ直ぐに見て問い掛ける。

その真剣な眼差しには、伊野尾を気に掛ける優しさも滲み出ている。

伊野尾にもそれがよく伝わる。

伝わっているからこそ、逆に伊野尾は八乙女を直視できない。

素直に 3→←素直に 1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (95 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
159人がお気に入り
設定タグ:HeySayJUMP , BL , 探偵
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:サツキ | 作成日時:2023年11月7日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。