ヒミツ♡ ２ ページ21
山田はいぶかしげな表情のまま着ている黒のトレーナーの袖をまくる。
すると、さっきの暴漢達ともみ合った時にできたと思われる大きな擦り傷が腕にできていた。
伊野尾「ごめんね。怪我させて……」
と、言いながら悲しそうで苦しそうな表情をふっと浮かべ小さく呟く。
そして、伊野尾は点滴をしている左手で山田の手を取る。
伊野尾「じっとしてて。」
山田「？」
山田はいろいろ疑問に思いながらも、伊野尾に言われるがまま腕を預ける。
八乙女と薮も顔を見合わせ、とりあえず２人の様子を見守る。
伊野尾はなんの躊躇いもなく右手で点滴の針をピッと抜く。
八乙女「おいっ！」
八乙女が焦って伊野尾に駆け寄ろうとするが、薮がそれを制止する。
点滴を抜いた腕からぷくっと血が湧き出る。
伊野尾は針を抜いたあたりを強く押して血をさらに絞り出す。
山田は黙ってその様子を見守る。
ぽたっ………ぽたっ………
と、血が伊野尾の肘を伝って床に下垂れ落ち始めた。
伊野尾はそっと山田の怪我の部分に自分の血が滴るよう引き寄せる。
１滴………２滴………３滴……………
伊野尾の血が山田の腕の傷を覆うように注がれる。
伊野尾「はい。いいよ。ねぇ、ウェットティッシュか何かある？」
八乙女「待ってて。」
八乙女は机の上からウェットティッシュを２〜３枚出して伊野尾に手渡す。
伊野尾「ありがと。」
伊野尾は優しく山田の腕の血を拭き取る。
山田「嘘…だろ………」
山田は思わず息を呑み腕をじっと見つめる。
薮「どんなトリックだよ。」
薮も眼の前で起きたことが理解できない。
八乙女も不可解な出来事に眉を潜めながら、検査結果の紙を凝視している。
それは、なぜか………………
治っているのだ。
山田の怪我が。
伊野尾「不思議だろ？」
山田はハッと我に返り、思わず伊野尾の顔を見る。
伊野尾は今にも泣きそうなのに、笑顔を必死に作っている。
山田と目が合った伊野尾は、ハァ〜っと大きく息を吐き、俯いた。
そして再び顔を上げた伊野尾には、もう泣きそうな表情はなかった。
伊野尾「他にも怪我してるだろ？治してやるよ。」
山田「治してやるよって、そんな。どうなってんだよ。」
伊野尾「説明して理解できんのかよ？」
山田「分かんねぇよ。」
伊野尾「じゃ〜黙って傷見せろよ。」
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作者名：サツキ | 作成日時：2023年11月7日 19時
