そりゃ、そうだろうな。 １ ページ17
少し離れた場所に路上駐車してあった黒いワゴン車。
薮は後部座席のドアを開けた。
薮「こっちのほうが広いからな。辛けりゃ〜横になってろ。」
伊野尾は薮に押し込まれるようにして、ワゴン車の床に下ろされる。
そこは、数日前に伊野尾が寝かされた場所だ。
今は黙って俯いたまま無言で膝を抱いて座ている。
薮は伊野尾が大人しく座っているのを確認すると、ゆっくり後部座席のドアを閉める。
山田は助手席に、薮は運転席へと素早く乗り込む。
ヘッドライトが点灯し黒のワゴン車が動き出す。
ちょうど事が起こった場所を通り過ぎる時、パトカー２台と覆面パトカー１台とすれ違った。
そして、ワゴン車を横目に見送る黒のスーツ姿の男性とも。
男性としては少し小柄かもしれない。
でも、鍛え抜かれ引き締まった肉体と類稀なる身体能力を備えている。
彼の名は知 念 侑李。
刑事だ。
知 念はワゴン車が過ぎ去ると、ニヤッと小さく笑みを浮かべる。
知 念「さぁ〜て、お仕事しますか！」
両手をパンっと１つ叩いて、雑居ビルと雑居ビルのは間に消えていった。
しばらくワゴン車は軽快に走る。
繁華街を抜け、住宅街を抜け、線路沿いを走る。
もう間もなく薮達の事務所というところだった。
ドサッと後部座席で音がする。
山田は少しウトウトしていたが、音に驚き振り返る。
後部座席を見ると、伊野尾がぐったりとして肩で息をしながら体をくの字に曲げて横たわっていた。
山田「い(の)っ………おまっ！どうした？」
山田は弾かれたように助手席を飛び越えて後部座席の伊野尾の元に寄る。
薮「山田？」
薮も目線は前を見ているが、少しだけ顔を後ろに向け様子を伺う。
山田はそっと伊野尾の頬に触れる。
山田「あっつ！！薮ちゃん、こいつすっごい熱ある。」
薮「そりゃ、そうだろうな。」
薮は小さく呟くとカーナビを操作し電話を掛ける。
プルルルルー……
ワンコールで繋がる電話。
八乙女「はいはい、薮？」
薮「おう！ヒカ、今から急患頼めるか？」
八乙女「いいけど、山田？」
薮「いや、新規だ。」
八乙女「怪我？病気？」
薮「熱。」
八乙女「はいは〜い。いつでもいいよ。」
薮「よしっ。もうすぐ着く。頼むな。」
八乙女「はいは〜い。」
とても軽いノリで電話口に出たのは八乙女 光。
医者だ。
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作者名：サツキ | 作成日時：2023年11月7日 19時
