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帝王降臨か？　３ページ16

男１「いてててててっ！！」

男１は堪らず悲鳴に近い喚き声を上げ、思わずナイフを落とした。

その一瞬の隙に伊野尾は首に回っている腕からすり抜けて、前のめりに倒れ込み少しでも早く男１から距離を取ろうと試みる。

薮「はっ(笑)上出来っ！」

薮は男１と一気に距離を詰める。

薮の長い足から繰り出された強烈な蹴りは、男１は顎に直撃すると、男１の体が大きく反り返りながら後ろに飛ばされる。

男１「がっはぁっ！！！」

男１は白目を剥きながら地面に叩きつけられ、ピクピクと手足を痙攣させている。

薮は「ふぅ～」と大きく息を吐いた時だった。

遠くでパトカーのサイレンの音が聞こえていることに気づく。

薮「さて、急いで此処を離れるぞ。知念に連絡したからな。」

山田「ちぃに？！」

山田は素っ頓狂な声で聞き返しながら、キメられて痛む肩を庇いつつ、よたよたと薮と伊野尾のもとに歩み寄る。

薮「大丈夫か？立てるか？」

薮はぺたんと地面に座り込んで呆けている伊野尾に手を伸ばす。

が、伊野尾は呆けたまま薮を見上げた後、ふっと視線を斜め下に落とす。

薮は、困ったように眉をひそめ苦笑いを浮かべる。

薮「話しは後だ。とりあえず場所を変えよう。」

薮はカーディガンをヒョイッと着せ直すと、半ば強引に伊野尾の右腕を自分の肩に回し、伊野尾を担ぎ上げる。

伊野尾はさっき蹴られた腹部が痛むのか、少しだけ顔をしかめる。

薮「行くぞ。」

山田も黙って薮の後に付いて行く。

ふと目線を伊野尾の背中に向ける。

伊野尾は薮の肩を借りなければ、まともに歩くことすらままならないほど心も体も憔悴しているのだろう。

また、着ている青いカーディガンが所々黒く汚れているのが暗くてもよく分かる。

山田「(かっこ悪っ……………俺…………)」

込み上げる悔しさの捌け口が見つからず、山田は唇を密かに噛み締めた。