帝王降臨か？ ２ ページ15
そして薮は目に力を込めて男達を睨みつける。
男1と男2から冷や汗が垂れるが、引くに引けなくなったのか、今度は男2が威勢よく薮に襲い掛かる。
男2「よっ………よくもやりやがったなっ！！」
上ずる声を必死で怒声に隠しながら拳を握る。
薮は相手の打ってくるパンチをバックステップで素早く交わす。
いきなり拳を矛先を見失った男2はバランス崩しよろける。
男2の体が伸び切ったタイミングを薮は見極めると、カウンターで男2の顔面にパンチを繰り出す。
男2「うぎゃあぁぁ〜」
男2は潰れた鼻から鼻血が吹き出る顔面を両手で抑えながら倒れ込み、地面をゴロゴロと転がりもがく。
薮は虫けらでも見るような冷徹な視線を男２に向け、戦意喪失していることを確認する。
男１「おいおいっ。お兄さん、強いね〜。」
男１の声がして、山田と薮が声の方を向く。
山田「つっ！」
山田が息を呑む。
男１はポケットに隠し持っていた小型のナイフを伊野尾の首筋に押し当てて不敵な笑みを浮かべていた。
伊野尾は、だらしなくずり落とされたカーディガンを手首に溜め、片膝を立てた状態で座らされており、首には男１のナイフを持つ腕がガッチリと回されている。
少し息苦しそうに顔をしかめる姿は妙に艶かしい。
男１は伊野尾にナイフを押し当てたまま伊野尾と一緒に立ち上がる。
男１「いいか、お前ら動くんじゃねぇぞ…」
声が震え、冷や汗を垂らしながら怒鳴る男１。
虚勢を張っているのがよく分かる。
しかし、手負いの小者ほど追い詰められると何をしでかすか分からない。
伊野尾「うっ…」
ナイフが伊野尾の首に食い込み、一筋の血が流れる。
薮「おいおい、落ち着けって。」
薮は少し小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、たしなめる。
男１「うるせぇ〜！」
薮は「ハァ〜。」と大きくため息をつくと一瞬だけ伊野尾に目を配る。
薮「おいっ！その大型犬、あんまり見くびんなよ。」
男１「あぁ〜？」
薮が不敵に笑う。
男１が苛ついて薮を下から上に睨み散らす。
その時だった。
伊野尾が両手で男１のナイフを持つ手の手首を持ち、グッと自分の体に強く引き寄せる。
男１が驚いた時にはもう遅い。
伊野尾は力いっぱい男１の腕に噛み付いた。
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作者名：サツキ | 作成日時：2023年11月7日 19時
