エピローグ ２ ページ2
歩行者信号が赤から青に変わる。
信号待ちの人々が伊野尾たちを避けるように通り過ぎる。
触らぬ神に祟りなし。
奇異の目だけを向け…
それぞれの道を進んでいく。
伊野尾だけがその場に取り残される。
？「さて、どうするかな。」
目の下に大きな隈を作って、これでもかってぐらい顔色最悪の伊野尾を胸に抱いて「？」は考える。
？「(とりあえず、移動かな。)」
声を掛けるわけでもなく、でも何事かと遠巻きにチラチラみる数多の傍観者。
何か事件かと携帯で動画を取りそうな輩までいる。
「？」は自分より背の高い伊野尾を背負う。
？「はいは〜い！通りま〜す！」
「？」は足早に移動する。
そして、携帯をポケットから取り出すと着信履歴の一番上の電話番号にかける。
？「あっ。薮ちゃん？俺、俺。」
薮「俺は誰？」
電話口でいたずらっぽい声が聞こえる。
？「そういうのっ…いいからっ…。」
大の男を背負って足早に歩いているので少し息が上がっている「？」は面倒くさそうに応える。
薮「どうした？山田。」
山田と呼ばれた「？」。
薮は山田の話し方の違和感から、何か起きていることを察して声のトーンが一つ下がる。
山田「ちょっとねっ。それより、車まわして。場所はさ……」
手短に薮と落ち合う場所を決め、携帯を切る。
山田「よいしょっ！」
山田は伊野尾をおぶり直す。
伊野尾「ごめん…な……(さ)…(い)…」
伊野尾が不意に山田の背に向けて呟く。
山田に向けられた謝罪でない。
うわ言だ。
ここには居ない、誰かに向けた謝罪。
山田は伊野尾に目線だけを向け、目を細める。
そして、再び山田は歩き出した。
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作者名：サツキ | 作成日時：2023年11月7日 19時
