怖がってたのは、俺の方。4 ページ10
ー 及川徹 ー
岩ちゃんが、Aの事を好きなのはずっと前から気付いてた。寧ろ、気付かない方がおかしい。あんなの、バレバレ過ぎ。
それと同時に、Aが俺らの事を恋愛対象として見てない事も。
でもそんなのは、ちょっとしたズレに過ぎない。
俺らの、弊害にはなり得ない。
そんな少しの理由で、Aが俺ら2人から離れる事を選ぶわけが無いのだから。
ある日の部活前。
岩ちゃんを2人きりで呼び出せば、凄い不機嫌な顔をされた。
『話があるなら、Aも一緒でいいだろ』
『Aちゃんには、今日の放課後話すよ』
『はぁ?じゃあ尚更今、』
と言おうとした岩ちゃんの口を、手で塞いだら。
腹パンを食らった。
この子、すぐ手ぇ出す。
『あのね、今日Aちゃんに告白しようと思って』
そう言えば、今までギャンギャンと騒いでいた岩ちゃんは急に静かになった。
彼の瞳は、悲しげで、切なそうで。
そんな表情見ると、俺まで辛くなる。
『…おうっ、そうか。
なら俺は応援する。
今日は、一緒に帰んのやめとくな』
何をそんな苦しそうな顔して、応援する、なんて言ってんのさ。
馬鹿なの?
がっと、岩ちゃんの腕を勢いよく掴めば。
『いてぇ』と呟かれた。
『俺が言いたいのは、岩ちゃんも一緒に告白しようって事だよ』
『は、はぁ!?何冗談言って、』
『本気だよ!』
叫べば、岩ちゃんはまた口を噤んだ。
もう少しだけ、話を聞いて、岩ちゃん。
すぐ。もう、すぐそこに、幸せな未来が待ってるから。
『2人でAと付き合えばいいんだよ。そうしたら、ずっと3人で居られる』
ね?
と、微笑みながら首を傾げれば。
岩ちゃんの瞳は、少しずつ明るさを取り戻していった。
うん、その目が、俺は好きだよ。
岩ちゃんは、俺の言葉に騙されてればいいんだよ。
『…そっか』
『うんっ。だから、部活後は告白大会だから準備しといてねっ。
はい、話はこれで終わりー』
その言葉とともに、岩ちゃんの腕をパッと離す。
結局彼は、疑問の声を投げかけたのは最初の最初だけ。あとは、全く疑いもしなくて。
岩ちゃんが本物の馬鹿で良かった、と。
心の中で、安堵を漏らした。
『き、今日かよっ!?』
『当たり前じゃーん。引き伸ばしても、Aちゃんに勘づかれるだけだって』
__ おかしいのなんて、狂ってるのなんて、自分で分かってる。
それでも俺は、3人で一緒に居られない未来なんて。
受け止められないよ。
[終].
白縹を汚したくて。1[及川,松川]→←そんな酷な事は、言わないからさ。3
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作者名:ヒマリ | 作成日時:2020年5月10日 23時