お前の彼氏、浮気しとったで。３ ページ4
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｢すまん。泣かせるつもりや、無かってんけど｣
その北の言葉に、ふるふると首を横に振る。
私やって、泣くつもりや無かった。
と、言うか、そもそもこんなちゃんとした証拠があるとも思ってなかったし。赤葦が浮気とか絶対せん、って思っとったんや。
…私、こんなに赤葦の事、好きやったんやな。
｢…ええよ。
私も、こんな姿見してごめん｣
北も、自分のせいでも無いのに目の前で泣かれたら正直鬱陶しいやろ。なんて、無理に笑ってそう言えば。
｢ンなわけあるか｣と返されてしまった。
｢…キツい証拠って、どんな？｣
｢まあ、キス、しとる写真とか｣
北は少し躊躇して、そう言葉を紡いだ。
…あぁ、何で聞いてしもたんやろ。
もっと涙が出てきた。
涙がポロポロと落ちて、手の甲の上に水滴が溜まる。
普通に、しんどい。
｢北…ありがと、教えてくれて｣
あぁ、もう。ほんま、苦しい。
胸が、今まで味わったことも無いくらいの痛みに襲われとる。
痛い。
｢あんなん、付きおうたのが間違いやったんや｣
北の言葉が、凄い身に染みる。
赤葦は、なんや北に似とるから、信じとったんやけどな。
…私、悪い男に引っかかるタイプやったんや。
｢…せやな｣
｢A、こっち向いてや｣
そう言われて、涙でぐしゃぐしゃの顔を北に向ける。
正直後輩には、こんな姿見せれへんけど。北なら別。
1年の頃から、ずっと一緒に頑張って来た仲間やから。
｢…ふ、泣き過ぎや｣
何故か北まで切なそうな顔をして、そう笑う。
そんな彼の言葉に、表情に、もっと涙が出てきた。
辛い。
信じとったのに。
そんな思いが止めどなく溢れて来て、今にも叫び出してしまいたい。
そんな私の頬に、彼はそっと手を添えた。
｢どうせなら、Aもすればええねん｣
そう言った北は、今までに見たこともないくらい優しい顔をしとって。あぁ、彼のちゃんとした笑顔を見たの久しぶりやな、なんて思っとる間に。
彼の唇は、私の唇に重なっとった。
いきなりやから、目を閉じる事も出来んくて。
ただただ、目の前にはまつ毛が長くて、綺麗な、北の顔があった。
｢これで、おあいこやろ？｣
顔を離して。私にたった今キスをした口で、彼は小さくそう呟く。
まるで、ドラマのワンシーンみたいなキスやった。
でも、それはただの思い違いで。
｢何、してるんですか｣
そんな、聞き慣れた声に、私は現実に引き戻された。
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作者名：ヒマリ | 作成日時：2020年5月10日 23時
