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赤葦京治の場合。2 ページ22

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まだ半袖を着るには、少しだけ肌寒いと感じていた頃だった。


「おはようございます」

合宿2日目の朝、そう微笑んだ彼があまりにもカッコよくて。思わす目が眩んだ。癖毛の黒髪に、綺麗な黒い瞳。
こんな人、昨日も居たっけ。

そんな疑問が私の脳を掠る。


「…あっ、えっと、あの。
私っ、烏野バレー部マネージャーの、花城(ハナシロ) Aって言います。よろしくお願いします!」

起きたばっかりのこの格好で、流石にちょっと恥ずかしいな。と思いつつ、取り敢えず自己紹介をする。

昨日、合宿に参加している高校の皆さんには挨拶した筈だから。彼にも会ってると思うんだけどな。


「…あぁ。
俺は梟谷2年の赤葦京治。セッターで、一応副主将ね」


彼は柔らかく微笑むと、スっと右手を差し出してくれた。
その手に私も自分の右手を重ねる。大きくて、ゴツゴツした手でギュッと握り返されて。何故か、顔が凄く熱くなった。


「あ、じゃあ俺、木兎さん達起こさないとだから。
また後でね、Aちゃん」


赤葦さんはそう言って、颯爽と私の前から姿を消してしまった。
その時の彼の笑顔も申し分なくて、ぐっと思い切り心を鷲掴みされた気分になる。

どうしよう、心臓の音が鳴り止まない。顔が、サウナに入った時くらい熱い。


…めちゃくちゃ、好き。





「あの!赤葦さん!」


その日の練習が全て終った後。
私はきちんとマネージャーの仕事を全部終わらせて、梟谷のバレー部の元へ来ていた。勿論、理由はただ1つ。


「どうしたの? Aちゃん」


スポドリを片手に、彼はそう聞きながら私の方へ歩いて来てくれた。汗だく姿の彼も、まるで咲き誇った何かの花みたいで。
かっこよ過ぎる。

ここまできたら、私の想いはもう止められなかった。


「好きです!付き合ってください!」


その突然の言葉に、一瞬周りがしん と静まり返る。


「…えっと、」

「だ、めですか?」

小さく、ぎゅうっと目を瞑ってそう聞いた。
ダメなら、潔く諦めるから。

だから、何かしらの返事をください。
そう願いながら、彼の言葉を待つ。


「…ダメじゃ、ないよ」


そう聞こえた瞬間、私は下に向けていた顔をばっと上げる。
赤葦さんの頬はほんのり赤くて。そんな優しい顔をされたら、期待してしまいます。


「俺も、可愛いなって思ってたんだよね。Aちゃんのこと」

「そ、れって」

「うん。
…俺と、付き合ってくれる?」


__ 幸せな初夏の夕方の出来事だった。



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作者名:ヒマリ | 作成日時:2020年5月10日 23時

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