君にはミルクティーがよく似合う。２ ページ16
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トコトコと、数学のノートと筆箱を持って廊下を歩く。
私は今、数学の先生に授業で分からなかった箇所を聞いてきたところだ。
数学の授業が終わってもずっと気になっていたので、わざわざ放課後に教室をスグ飛び出して、職員室に向かった。
…あぁでも。
そのせいで、山口君が部活に行く姿見れなかったな。
なんて、少ししょんぼりする。
彼と、未だに、全っぜん、少しの進展も無い私は。
山口君が部活に行くまでの時間、彼に気付かれないように、彼のことを見つめる事が日課になっていた。
…いや、声掛けるよう努力しろよ。
と、心の中のもう1人の私に突っ込まれる。
…もう、部活に行っただろうなぁ。
と、残念に思いながら、自分の教室に近付けば。
ちょうど、山口君と月島君が鞄を持って教室の扉から出てきた所だった。
｢！？｣
っと、思わず驚いたけれど。何とか、声を出さないように口を閉じた。
…まだ、行ってなかったんだ。
｢山口、準備遅いんだけど｣
｢ごめーん、ツッキー｣
なんて、今日も2人は仲良さそうに話しながら。
こちらに向かって歩いてくる。
平常心、平常心…。
何事も無いように、彼等の隣を通り過ぎようと思っていると。
ふいに、私の姿に気付いた山口君と目が合ってしまった。
｢っ、｣
心臓、止まる。
いや、多分もう止まった。
｢あっ、如月(ｷｻﾗｷﾞ)さん。またね〜｣
彼は、私の苗字をサラリと呼ぶと。ふわふわと可愛らしく、右手を振ってくれた。彼の周りに、花がフワリフワリと舞っているように見える。
｢…へっ、うん。またね｣
何とか、声を絞り出して返事をすると。
山口君は、更に、もっともっと笑顔になってくれた。
…可愛過ぎる。
因みに、隣に居た月島君にも、｢一応｣と言いたげな顔で頭をぺこりと下げられた。
ほんと、対照的。
そんな事を感じながら、彼等の横を通り過ぎる。
教室に戻れば、珍しくそこには誰にもいなかった。
皆、帰ったか、部活に行ったのだろう。
…助かった。
｢はぁぁぁ〜〜〜〜…｣
と、言いながら。
教室に入ったすぐの所でしゃがみ込む。
…死ぬかと、思った。
って言うか、彼の眩し過ぎる笑顔に殺されるかと思った…。
相変わらず、今日も彼の右手には紙パックのミルクティーが握られていて。
やっぱり、似合うなぁ、なんて幸せに浸りながら考えていた。
｢山口君も、ミルクティー好きなのかな…｣
誰にも聞かれないことを言い事に。
私はそんな事を、1人呟いた。
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作者名：ヒマリ | 作成日時：2020年5月10日 23時
