白縹を汚したくて。３ ページ13
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｢因みに、どっちから？｣
なんて質問を彼に投げかける。
馬鹿だなぁ、私も。
｢まあ、向こうからだけどさ〜｣
そんな言葉に、思わず息をつきそうになった。
…なんて虚しい、悪足掻き。
｢それより、Aちゃんこそ…｣
そう言いかけて、及川の言葉が途絶えた。
彼の瞳は、私ではなく、私よりも奥の方を向いていて。
あぁ、もう時間か。
…と、彼の瞳の動きに全てを察する。
｢お迎えだね｣
及川がそう言った瞬間、私は後ろを振り向いた。
教室の扉の所には、いつもの様に。松川一静が立っている。
彼はふわりと優しく微笑みながら、私に向かってヒラヒラと手を振っていた。
｢ホントだ。
じゃ、また後で、及川｣
私は再び及川の方に顔を向けると、席を立ち上がる。
財布は確か、ポケットにもう入れたはずだ。
｢はいはーい、お幸せに〜｣
｢及川こそ、お幸せに｣
皮肉めいたように言う彼に、私はニコッと笑いかけて。
直ぐに、松川の方へ足を向けた。
扉によりかかっている彼は、相変わらず色気が凄い。
｢ごめんな、遅くなった｣
｢いーよ。お昼、何食べる？｣
｢んー、どうしよっか｣
そんな事を話しながら、彼と並んで購買へと歩き出す。
彼、松川一静は私の�猗犹甅瓩澄�
｢…及川とは何話してたの？｣
｢及川に新しい彼女が出来たって、はなし｣
｢ふーん｣
彼はそう返事をすると、腰を屈めて私の顔を覗き込んだ。この顔、絶対女性向け雑誌で表紙飾れるだろ、と思わず変な事を考える。
｢嫉妬した？｣
にやぁ、と効果音がつきそうな顔で彼は微笑むと。
そう囁く。
｢別に、いつもの事だし｣
｢…まあ、それもそっか｣
少しの間の後、松川はそう返して顔を離した。
彼、松川一静は私が及川徹に恋心を抱いている事を知っている。
そして、私が及川に対してどす黒い欲望を持っている、という事も。
…バレたのは、何が原因だったっけ。
確か、私が無意識に声に出してたんだよな。
『傷、付けたいなぁ…』
松川はそれを聞いた数日後、私に急に告白をしてきた。
どうやら、前々から私の事を好きだったらしい。
勿論、断ったのだけれど。
『俺は別に、2番目でいいよ』
『…俺なら、Aの汚い所も全部愛してあげられるけど？』
彼は平然とそんな事を言いのけて。
でも、そう言った彼の顔は何とも悲しそうで。
矛盾した松川を、拒否する事なんか、出来なかった。
__ 私は、なんて最低なんだろうか。
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作者名：ヒマリ | 作成日時：2020年5月10日 23時
