君がミルクティーを好きだって言うから。４ ページ18
ｰ 山口忠 ｰ
｢△△中学から来ました、如月 Aです。
好きな飲み物は、ミルクティーです｣
入学式の日。
そう、自己紹介した彼女から目が離せなかった。
ツヤツヤとした黒髪、長いまつ毛、大きな瞳。
優しそうな可愛らしい声。
全てに、目を奪われていた。
その瞬間から、俺は彼女の事が好きだった。
その日から。俺は昼休みに、自販機にある紙パックのミルクティーを買うようになった。
好きな物が一緒とかって、話し掛ける理由になるかなって思ったんだけれど。
彼女は、全くミルクティーを飲んでいなかった。
本当に、1回も飲んでるとこ見た事ない。
でも、�爛潺襯�ティーが好き�瓩辰童世辰燭里蓮�
嘘じゃなかったと思う。
偶々彼女の席の隣を通り過ぎた時。聞こえて来たんだよね、友達との会話が。
『Aさー。ミルクティー好きって言ってたのに、全然飲まないよね〜』
『うん…好きなんだけどね』
そう笑った彼女の笑顔は、その日1日。
いや、まる1週間くらい頭から離れなかった。
…可愛過ぎる。
でもやっぱり、彼女と話す方法なんて�爛潺襯�ティー�瓩�らいしか思い付かなくて。
俺は凝りもせずに、昼休みから放課後にかけて紙パックのミルクティーを飲み続けた。
そして、入学してから半月程経ったある日。
毎日毎日ミルクティーを買い続ける俺に、とうとうツッキーは痺れを切らして問い詰めてきた。
『何なの？そんなにミルクティーばっか飲んで。
糖尿病になりたいの？』
なんて、キレ気味に言われちゃったので。
渋々と理由を話すと、少し馬鹿にされた。
『普通に話しかければいいじゃん』
いや、あのね。
俺も、ツッキーや影山みたいにイケメンだったら自分から話しかけにいくよ？
日向みたいに、どんな壁をも乗り越えられるコミュ力があるんだったら喜んで話しかけるよ？
…でも、そんなのひとつも持ってないんだもん。
そう返せば、ツッキーは呆れ気味に
『もっと自分に自信持ちなよ』
と、呟いた。
__ そして、それからまた半月が経ち。
放課後、課題のプリントが見つからなくて部活に行く準備が遅くなっちゃった俺とツッキーは。
偶々、何処からか戻ってきた彼女とすれ違った。
思わず、可愛すぎる彼女に声をかけて。それだけで満足していたのだけれど。
｢…行かなくていいの？
行きなよ｣
なんて、ツッキーが言うもんだから。
俺は、意を決して。
教室に向かって駆け出したのだった。
［終］.
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作者名：ヒマリ | 作成日時：2020年5月10日 23時
