［94］__ 澤村side ページ49
.
▽ 澤村side ▽
ただ、自販機に飲み物を買いに来ただけだった。
然しそこで会話するAと知らない女子を見つけてしまって。
まあ、簡単に言うと俺はAの怪しげな取り引き現場……じゃなくて、告白現場に遭遇していた。
てか、普通に考えて後輩のこんなとこ見るの悪趣味過ぎるよな、と思い。壁に寄りかけていた腰を上げる。
因みにAが彼女の告白を断ったから安心した、なんて思いは心の奥底に埋めて蓋をした。
だが、教室に踵を返しかけた時。
吉川｢何で！？どうして付き合ってくれないの！？｣
そんな女の子の声が聞こえてきた。
もう一度、彼らの方に目を向ければ女の子は大量に目から涙を溢れさせていた。
｢…ごめん、僕、今は部活と勉強にだけ集中したくて｣
でも、そんな答えじゃ女の子は満足していないようだった。
吉川｢でも水宮君は付き合ってる人居ないのよね！？｣
｢まあ…そうだけど｣
吉川｢じゃあ、彼女にしてくれてもいいじゃない！｣
…全っぜん、会話が噛み合ってないな。
と言うか、今はあの子に何を言っても通じない気がする。
｢えっと、だからね？｣
Aも困っている様子だ。
優しく返してはいるものの、彼の笑顔が引き攣っているのが遠目からでも分かる。
吉川｢…そうやって優しくするなら、サッサと付き合ってよ！！｣
もう一度叫び声をあげた彼女と、思い切り振り上がる女の子の手。俺は、反射的にその場から駆け出していた。
バッと振り上がった女の子の手を、間一髪で掴み止める。横目には、目をギュッと瞑っているAが映った。
何で、叩かれるのを止めようともしないんだよ、この子は。
澤村｢…もうその辺にしといたら？｣
｢…えっ？｣
俺の声を聞いて彼は目を開くと、驚きで目をぱちぱちと瞬かせていた。
吉川｢なっ、何ですか！関係ないじゃないですか！？｣
澤村｢関係無いけど、Aが言う事を聞かないからって叩くのはちょっと違うんじゃない？｣
そう言えば、彼女はまたボロボロと目から涙を流して。キッと、俺を睨むと校舎の方に逃げる様に駆け出して行ってしまった。
澤村｢…すまん。余計な事言ったかも｣
｢いえ、助かりました｣
そう言ったAは、嬉しそうに微笑んでいた。
｢ありがとうございます、澤村さん｣
澤村｢…いや、俺も。勝手に覗いたみたいになって悪いな｣
俺の言葉に、Aは首を横に振った。
──── 俺の答えはもう、出ているのかも知れない。
(続く)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 554人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おののいもこす - 92の濡れてる方が＿って、京都銀行の相合い傘 濡れてる方が 惚れている ですよね！あの句いいですよね！ (2020年4月27日 10時) (
レス) id: b426f69678 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 面白すぎます！更新楽しみにしてます！更新頑張ってください！ (2020年4月25日 20時) (レス) id: 0a80c4d22b (このIDを非表示/違反報告)
あやの(プロフ) - 今後どうなるのかほんとに楽しみです！続き楽しみにしていますね！更新頑張って下さい。 (2020年4月9日 11時) (レス) id: a320407a1b (このIDを非表示/違反報告)
樹 - 続編来ました！この作品が大好きです。正直早く続きが読みたくてうずうずしています。主人公がこれからどう進化したり人間模様がどうなるのかも楽しみにしています。 (2020年4月9日 11時) (レス) id: 8e6b7bcff3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヒマリ | 作成日時：2020年4月9日 11時
