甘い乾き

# 剥がれていくウソ ページ43

ひ｢俺じゃなくてゆうたの方がいいな｣



位置を少し変え、やまとの隣に座る。
これで全員の顔が見えるようになった。



自分の話す番はないと思っていたのか
俯いていたゆうたがさっと顔を上げる。



ゆた｢……俺？｣


ひ｢最初はお前だろ｣


ゆた｢けどさ｣


ひ｢その覚悟で誘ったんだろ｣



ひゅうがの言葉は、重い。
真っ直ぐ真っ直ぐ胸に突き刺さる。
一瞬の沈黙の後ゆうたが口を開いた。



ゆた｢…1ヶ月半前ぐらいにベランダに出てるA見た｣


ゆた｢遠くてあんま見えなかったけど
何か辛そうな顔してる気がして｣



偶然同じマンションに住んでいた知り合いに協力してもらって
エントランスに入ったこと。
ベランダの位置から部屋番号を割り出し
インターホンを鳴らしたこと。



あの日あたしが携帯のメモに書いて見せたメッセージから
どうにか違う手段を使ってあたしと話す機会を作ったこと。
今日ヤニヤニに会う前に
既にゆうたとあっちゃんとは出かけたこと。



全てを簡潔にゆうたは話した。
隣の彼の表情は、分からない。



ゆた｢悪ぃ。1番行動したらダメなのは
俺だって分かってたんだけど｣


『A。やっぱりあの日は宅急便じゃなかったんだ？』


｢あ……う、ん｣


『やっぱりあの日、外に出てたんだ？』


『俺に嘘……ついたの？』



表情は依然見えない。
でも分かる。
やまとは今、傷ついてる。

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