甘い乾き

# 革命でも起こしますか ページ40

あたしが何を言おうとも
ゆうまが焦れったそうな態度をとろうとも



肉を食べ終わるまでひゅうがが動くことは無かった。



ご飯どころじゃなくなったあたしのビーフシチューパイを
ゆうまに託し、ゆうまがしっかり奢ってから乗り込んだ車。



発進してからもひゅうがは自身の考えを言おうとはしなかった。



あの角を曲がれば事務所やあたしたちのマンションが
見えるというところでひゅうがの携帯が鳴り響く。



スピーカーにしなくとも、相手が誰か分かる大声だった。



｢もしもしやまと、どうした｣


(『ひゅうが！！Aがいない！！』)


｢何で？｣


(『そんなの俺が聞きたいよ！携帯置きっぱで
玄関の鍵も閉まってんのにいねぇんだ！』)



やまとがパニックになっている。
携帯を取り上げてここにいると伝えたくなったが
そんな事をしても事態が好転することは無い。



あたしは今、ひゅうがに任せるしか道がない。



(『俺ら3日前ぐらいに雰囲気悪くなっちゃって…
それで俺の事嫌になって出てったのかもしんない、
どうしよひゅうが』)


｢とりあえず落ち着け。事務所行くからやまとも戻れ｣


(『もしAが襲われたりしたら、』)


｢やまと。大丈夫だ落ち着け。事務所戻っとけよ、いいな｣


(『……分かった』)



通話が終わる。
彼が口を開いた。
あたしと、ゆうまに向かって。



｢今から事務所行くから。ちゃんと、話せ｣


｢それとゆうま。もしやまとがやばくなったら
俺一人で抑えられるか分かんねぇから補助頼む｣


｢…分かりました｣



あたしは、返事は出来なかった。

# 恐怖が全てを支配する→←# 緊急事態発生

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す