甘い乾き

# 彼の相棒 ページ37

マンションの30階。
エレベーターから降りた先に
オシャレな看板が出ていた。



いかにも高そうなお店に堂々と入っていくひゅうがの後を
気後れしながら急いで追う。
誘導されたのは、奥の個室。



彼が手前に座ったから、自然と奥に腰を落ち着ける。



｢ゆうまの奢りだから何でも食いなよ笑｣



メニューを2人で見ながらひゅうがが言う。
ゆうま来なかったら終わりじゃん、笑



俺はこれ！と元気にステーキを指したのに続いて
パイに包んだビーフシチューを選んだ。
店員さんがお冷を持ってきてくれたついでに注文を済ませる。



目が合うとどちらも自然にグラスを差し出した。



｢うぇーいかんぱーい｣


｢かんぱいー｣



まるで水がビールに見えるほど良い飲みっぷり。
何日も水飲んでなかったんか。



｢でどうなん。やまととは｣


｢みんな聞くじゃん笑 順調だよ｣


｢ふーん、順調なんだ？｣



その言い方には、含みがあった。



｢…何？笑｣


｢やまと、ここ数日めっちゃ空元気だぞ。
本人隠せてるつもりかもしんねえけど｣



さすがやまとの相棒だ。
その綺麗な丸い目で、よく人を見てる。



空元気か。
あたしは数日、顔も見てないよ。



夜はやまとが帰ってくる前に寝てそのまま熟睡。
朝は、気づけば隣から起き上がって眠たそうに目をこする
背中だけを見送る。



彼がダメージを受けているとはその姿から思えなくて
あたしも歩み寄れていない。

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