甘い乾き

# ヴィラン ページ23

ゆうたの表情が時を止める。
初めて口に出したこの言葉の重みは
あたしさえも抱えきれないものだった。



ゆうたにとっては、親友。
あたしにとっては、彼氏。
どちらにとっても大事な人に違いないけど。



だからこそ、彼の行動は痛くて辛い。



｢あの日からずっと…出てねぇの？｣


｢そうだよ。玄関にカメラついてるから出られない。
ゆうた来た時まじで焦った笑｣


｢俺が言うのもおかしいけど、出たいとは思わねぇの｣



少し笑いながら返した言葉を彼は一刀両断した。
ここに来た時から真剣だった顔が一段と凄みを増す。



｢……出たいよ。仕事したり友達とご飯行ったりしたい｣


｢でもできないの。やまとに言えない。
言ったらやまとがどうなるか分からなくて、怖い｣



ゆうたがすーっと息を吐いた。
一瞬眉間に皺を寄せて、彼は言う。



｢だったら、俺がまた悪役になるわ｣


｢……悪役？｣


｢俺が外連れてく。2人きりが嫌だったら
他のメンバーも連れてくるし｣


｢え、けど｣


｢俺らはやまとにバレないようにする。でももし、
話せる時が来たら話した方がいい｣



その場の勢いで言ってるわけではなさそうだった。
ノリでこんなこと言う人じゃないって
さっきの話を聞けば分かる。



ゆうたは本当にまたやまとにキレられる覚悟で。
しかも2度目はどうなるか分からないのに。



｢なんで……？｣


｢何が？｣


｢もう随分会ってもなかったのに、何でそんなことしてくれるの？｣



罪滅ぼし？
それとも……



｢……好きな子には、幸せでいてほしいだろ｣



そこだけは、視線が合わなかった。

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