甘い乾き

# こっちにおいでよ ページ19

クーラーの風に当たる風鈴が
カラカラと夏の音を立てる。



当然1人のあたしは寂しくもその下でアイスを頬張っていた。
昨日やまとが買ってきてくれた
ハーゲンダッツ詰め合わせの抹茶味だ。



正面では、朝からつけっぱなしにしているテレビから
15年ほど前の学園ドラマが再放送されていた。
それをボーッと眺めながら、抹茶の次は何を食べようかと
意地汚いことを考える。



何味があったかよく見てないけど
いちごかバニラ辺りがいいかなあ…
一応断っておくと今日食べるんじゃないからね。



一度考え出すともうそのことが気になって離れない。
どうにもこうにも何味があるか確かめたくなって立ち上がる。



それとほぼ同時に、ベランダの方から物音が聞こえた。
カーテンのレース越しにそちらをちらっと見ると
ハーブではない何かが落ちている。



誰かが投げたのか、隣もしくは上から入り込んだのか。
四角っぽく薄いそれが、動きそうにないことを確認して
ベランダに出た。



拾い上げたそれは、1枚のメモ。



[ 屋上来て。非常階段から行けるから。 ゆうた ]



｢……え？｣



慌てて視界をぐるっと1周させても、ゆうたの姿はない。
さっきの物音はゆうただったのか。



前回も今回も、一体どうやってエントランスを突破してきてるんだ。



時刻は13時になったばかりだった。
やまとは今日も帰りが遅い。



少し話すぐらいなら。
玄関を通らなければ。
やまとに、分からなければ。



ベランダからほんの少し身を乗り出せば非常階段に出られる。



外の世界からの手招きに、あたしはついに乗ってしまった。

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