甘い乾き

# 見つかっちまった ページ11

そうだよな。
よく考えたらこの隣のマンションが
事務所なんだもん。
今まで見なかったことの方が奇跡だ。



あれから1年近く経つ。
閉じこもっていると冗談抜きで、
この世界はあたしとやまとしか居ないんじゃないかって
感覚になるのだが、今あの人を見た事によって
世界はちゃんと動いてるんだと認識できた。



うん、そういう意味では見れてよかったかもしれない。



そろそろ行っただろうか。



しゃがんたままの状態で目だけを覗かせる。



｢あらー…｣



……行ったどころか増えている。
そしてこちらもコンビニの袋を提げているということは
2人で行ってきたんだろう。



メガネをかけているゆうたと、その隣で無邪気に笑うひゅうが。



なんか、懐かし。
あっちゃんやゆうまも元気かな。
やまとは社長業とYouTubeの両立で大変だけど
きっと4人も編集に追われて大変だよね。



もう会うことは無いと思ってたからあまり考えなかったけど
こうして姿見たら色々思い出すな。



ひゅうがの笑い声が微かにここまで聞こえる。
何がそんなに面白いんだろうと、あたしもつられて笑った。



するとその瞬間。
まるでここにいるあたしの声が聞こえたかのように
ひゅうがが顔を上げた。



まずいと思った時には遅かった。
視力のいいあたしは、2人の顔がはっきり見える。



あたしを捉えて固まったひゅうがは、直後嬉しそうに顔を崩した。

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