甘い乾き

# 朝が来た ページ2

アラームが朝を告げる。
一日の中で最も大変なこの時間。
あたしは彼を、起こすところから。



耳障りな音を1秒でも早く断ち切って
よく開かない目を無理やりこじ開けると、
視界いっぱいに彼の胸板。



163cmのあたしをすっぽり腕の中に収めて
彼はまだ規則正しい寝息をかいている。



｢おーい。朝だよ｣



いつもの手順。
向き合った状態でモゾモゾ動くと、こてんと仰向けに転がる。



｢やまとー、起きて！｣



ここで眉間に皺が寄る。
その皺をぐっと押すと、初めて彼が声を上げる。



『んー…』


｢仕事だよ社長さん。起きないと社員が困るよ！｣


『あと5ふん…』


｢だめ、起きなさい。起きやがれワニ｣


『…だれがわにやねん』



体勢を起こして、彼の体を足で挟んで立つ。



寝ぼけててもしっかりツッコんでくるやまとの腕を掴んで
ぐいっと引っ張った。
これは昔、動画でひゅうがが寝起きのやまとを立たせて
起こしたのを参考にしている。
こうすると起きてくれるから。



『んんぅ…Aー…』


｢はいはい眠いよね、おはよ｣


『おはよぉ…』



昨日帰ってきたのも記憶が正しければ午前4時とかだった。
そこからなんだのかんだのして布団に入ってきたのは5時前。
今は8時で、実質3時間睡眠だからそりゃ眠いに決まってる。



彼が社長を務めるチーム、コムドットは
数年前から全員人間を辞めている。



あたしに出来ることはほぼ何も無いのだけど
マッサージしたりアロマを焚いたりして
少しでも彼がリラックスできるよう、
形だけでも人間で居れるよう
色々考えてみたりはしている。



心の面でこの社長を癒せるのは、あたしだけだから。

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