君と見たあの空を (ページ34)

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「道、分かります？」

『たぶん。分からなかったら誰かに聞きます』

そろそろ帰ると言った私に送って行くと帽子を被ろうとした彼を止めて玄関に立った。

あの公園からさほど遠くないと言っていたからきっと迷わないだろう。

きっと。

まあもし迷ったとしてもコンビニか何処かで道を聞けば分かるだろうと思い

お礼を言って扉に手をかけたところで止められる。

「まって、心配だし連絡先教えて」

そう携帯をヒラヒラと顔の横で振った彼。

「そもそも俺が公園までは送ってくって言ってんのに頑固なんだから。」

呆れたように私を見つめて携帯を貸せとばかりに手を差し出してくる彼。

確かに玲於くんに連絡した方が手っ取り早い気もする。

「家着いたら連絡してくださいね、約束。」

素直に携帯を渡せば慣れた手付きで連絡先を登録した玲於くん。

約束なんて言いながら差し出された携帯を受け取って

亜嵐くんにも昔、同じようなこと言われたなと思い出して微笑ましくなる。

「何笑ってんすか」

若干不満そうに細められた目になんでもないと答えて今度こそ扉を開けた。

知らないマンション。

知らないエントランスを抜けて外に出れば

思ったよりもあの公園の近くの風景が広がっていて

これなら余裕で帰ることができそうだと思った。

一人、帰路に立つとなんだか途端に疲れてきた。

玲於くんとお話ししていた時はなんだか楽しくて

もっともっとって元気が漲っていたのにな。

どうやら身体は既に休息を求めているらしく瞼が今にもくっつきそうだった。

こんな事なら玲於くんに送って貰えばよかったかもな

きっと彼と一緒なら家に着くまでは疲れを感じることなんてなかっただろう。

なぁんて、

こうなる事が分かっていたとしても絶対に送ってもらうことはしないけど

『ふふっ』

ぐるぐるとそんな事を一人で考えて

「頑固なんだから」と不満そうに目を細めていた彼を思い出して思わづ笑みが溢れた。

　