君と見たあの空を (ページ13)

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「ちょっと捻ってますよね？」

そう言う佐野さんにこのくらい大丈夫だと伝えるけど

突然手首にやってきた冷たい触感にびっくりして顔に向いていた視線を落とす。

『冷えピタ、ですか？』

「そう、暑い日には貼ったりするんですよ」

私の手首をジッと見たままそう答える佐野さんの言葉に納得する。

激しいダンスをする彼にとって身体を冷やすアイテムの一つなのだろう。

『すみません、何から何までありがとうございます』

冷えピタのことも男から助けてくれたことも併せてお礼を伝えると頷きながら

「軽く捻ってるだけっぽいんで大丈夫だと思いますけど悪化するといけないんで
あんまり動かしちゃダメですよ？後、帰ったらちゃんと冷やす事。」

なんて念を押される。

『言われたとおりにします』

そう頷いてお礼を伝える。

佐野さんがいなかったら今頃どうなっていたか。

考えただけでもゾッとした。

「じゃあ、そろそろ行きますね」

『あっ、待って！お礼させてください』

「いや、俺大したことしてないんで」

『そんな事ないです、助かりました』

大したことないと笑ってる佐野さんに食い下がりしばらく問答を繰り返す。

『……なんか、デジャブですね』

前にも似たようなことがあった事を思い出して思わず口に出していた。

「同じこと考えてました」

笑みをこぼす佐野さんにもう一度だけ言ってみる。

『今度、ご飯でも奢らせください』

私の提案にパチパチと目を瞬かせ一瞬考えるような表情を作った彼は

「、、そうですね、じゃあ楽しみにしてます」

結局ニッコリ笑ってそう言った。

これできちんとお礼ができる。

「美味しいところ期待してます」

『もちろんです』

悪戯に笑った佐野さんに頷いて今度こそその場を離れた。

思わぬハプニングから始まり

予想以上に時間が経ってしまっていたことに気がつき慌てて車へと向かう。

「遅かったっすね」

『うん、遅くなってごめんね』

「いや、まだ時間あるし全然いいんすけどー」

そう言いながら車を発進させた石田くんにバレないように

そっと腕に貼られた冷えピタを見つめる。

正直、スタッフさんに絡まれたことは伝えておいた方が良いのかもしれない。

それでもあまり心配はかけたくなかった。