君と見たあの空を (ページ11)

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テレビ局の廊下を歩いていた時のこと。

　
『佐野さん!』

撮影スタジオのエレベーターを降りてくる姿を見つけ少し遠いところから慌てて呼び止めた。

振り返り軽く会釈をした彼は少しずつ近づいて来てくれる。

「久しぶりですね」

『はい！お久しぶりです。先日のお返しさせてください』

「あー覚えてたんだ」

フフッて可笑しそうに笑った彼に頷いて二人で自販機の方へと向かう。

『コーヒーでいいんですか？』

「はい、これでお願いします」

沢山ある中で一番右のものを示した彼。

『やっぱり種類によって味とか変わるものなんですか？』

なんとなく聞いてみればやはり全然違うのだそう。

『へー私、コーヒー飲めないからなぁ』

「あれ、飲めないんですか？」

『はい、苦いから』

「ハハ、王道な理由。でもなんか意外ですね」

コーヒー片手に颯爽と歩いてそうなのに。

なんて真剣な顔をして言う彼に笑ってしまう。

なんですか？そのイメージ。

そっかそっかって何度か納得するように頷いていた佐野さんは

思い出したように首を傾げた。

「うちの隼のコーヒーは上手いんで飲めるかも知れないっすよ？」

『小森さんの？』

「はい、あいつコーヒーの研究してるから言えば飲みやすいの持ってきてくれるかも」

『へーそれは飲んでみたいですね』

「ぜひ、またライブに来たときにでも飲みに来てください」

『ぜひ』

「約束ですね」

ニッコリと笑った佐野さんに笑い返す

佐野さんと何か約束をするのは二回目だった。