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私はその手紙に直接願いを込めるみたいに
ぎゅっと握った。
そのとき、
私は、思い出した。
少し前、
自分がこの夏に存在していたことを
ちゃんと証明しよう、
ちゃんと形に残そう、
そう思って、
あるメッセージを残したことを。
秘密基地にある
写真の裏に、
「忘れても、忘れないでね」
なんて、
矛盾ばかりの言葉を
綴った。
私は、
急いで、そのメッセージを消そうと
そして違う言葉を並べようと
そう決めて、
走り出した。
確かに目の前に迫ってくる
何故か懐かしさを感じてしまう秘密基地が
私を、
優しく手招きしてくれている気がした。
私は、
その空間に吸い込まれていくみたいに
1歩踏み入れた。
「お邪魔します、。」
と、最後の言葉を口にしながら。
変わらない景色の中に
よりいっそう輝いてみえる写真立てを
すぐに手にとって
写真を取り出し、
裏返しにした。
え.....？
私は、
自分の目を疑った。
なぜなら、
「忘れても、忘れないでね」
という私が書いたメッセージに
ところどころ斜線が入っていて、
「忘れない」
とだけ残っている上に、
「忘れない、よ」
" よ " という柔らかな語尾が付け足されていた。
そして、
その下には、
「また奪われにこいよ」
「やくそく」
と、暑い文字が綴られていた。
何度見つめ直しても、
それらの文字は
いっそう強く光るばかりで
私は、
あまりの眩しさに
ぎゅっと目をつむった。
すると、
海みたいにしょっぱい涙が
こぼれた。
その3つのメッセージは
全部柔らかさとか、甘さが違って、
とにかく、君たちが書いたものだと
すぐにわかった。
いつ見つかったんだろう
とか、
いつ書いてくれたんだろう
とか、
ほんの一瞬だけ浮かんだ疑問も
すぐに夏風に飛ばされて、
残ったのは、
もっと君たちといたかった、
という思いだけだった。
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作者名：嶺花 | 作成日時：2020年11月30日 18時
