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「....あ、すみません。」
私は、
顔をあげないままそう言って
その場を去ろうとした。
でもそのぶつかった相手は
何も言わずに
私をただ抱きしめてきた。
「え、なんですか、」
息が上がって、
頭に酸素がうまく回っていなかったらからか、
ぶっきらぼうにそう言い放った。
でも、
その腕の筋肉とか、
ふんわりした匂い、
それらは
その存在が
ずっと探していた
紫耀くんだった、
ということに気づかせた。
「ごめんなさい、
紫耀くん、、、」
紫「ううん、
やっと見つけた.....」
「探しててくれたの、？」
紫「あたりまえじゃん、
どこにもいないんだもん、」
「私だって、探してた、」
紫「昨日はごめん、」
「ううん、大丈夫、
でも、
また聞いてくれるかな、」
紫「もちろん、
でも、
ちょっとまって、」
「そっか、ありがとう、」
やっぱり聞きたくないのかな、
私が言おうとしてること、
バレちゃってるのかな、
困らせちゃうかもしれない、
そう分かりきってるけど、
伝えなきゃ、
私も
夏に忘れ物したままになっちゃう。
私のわがまま、
聞いてくれるかな。
紫「あそこのおばあちゃんのとこ
いったべ、笑」
「ううん、笑
行ったっていうか、
通っただけ」
紫「俺さ、
いるかなーって思って
顔出したら、
すんげえからかわれちゃった笑」
「えー、なんて言われたのー？」
紫「恥ずかしいから内緒ー笑」
「紫耀くんのケチ、」
紫「んーー？なんだとー？」
ふははっ！
君との笑い声が
広い海の吸い取られていくみたいだった。
この賑やかさ、
あと何回味わえるのかな、
この屈託のない笑顔、
何回見れるのかな。
心のかけらが
まっさらな砂浜に
ぽとん、と
落ちていった。
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作者名：嶺花 | 作成日時：2020年10月15日 1時
