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顔を上げて、
砂浜をひと蹴り。
たしかに進んでいく一歩は
さっきよりも
丁寧だった。
とにかく走って、
ほんの少しだけ立ち止まって、
それを繰り返していた。
あたりを見回しても
どこにも見当たらない。
見つけられない。
いつまで
かくれんぼしてるの、
もういいよ〜！
って、
君は言ったじゃんか、
そんな夢の中で
私は
紫耀くん、！
と、
小さく唱えた。
でも返事は返ってこない。
ねえ、
紫耀くん....
どこにいるの、
あ、
もしかしたら、
あの、秘密基地にいるかな？
君たちの
もう一つの家、
そこになら、
いるかな。
そう思って、
私は
進む方向を一気に変えて
待ってて、
と、また小さくつぶやき、
一歩を踏み出した。
向かい風だった夏風は、
一気に
追い風になって、
私の背中を、
思い切り押してくれている。
今なら言えるかな、
ちゃんと言えるかな、
好きって気持ち…。
懐かしいような景色をかきわけて
君たちの場所に走った。
入り口についた途端、
「紫耀くん、！」
と叫んだ。
中に響く声がはねかえって
もう一度私のもとに届いたとき、
その中には誰もいないことに
気づいた。
ここじゃない、？
じゃあ、どこにいるの、
さっき願ったはずのネックレスに
思いを馳せる。
どこにいるか、
教えてよ。
「紫耀くん、」
何度唱えても君はいない。
会いたいだけなのに。
伝えたいだけなのに。
私は
さっきの道をそのまま戻り、
小走りで砂浜を進んだ。
今日は会えないのかな、
そう思ったとき、
前から来た人に気づかず、
ぶつかってしまう、
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作者名：嶺花 | 作成日時：2020年10月15日 1時
