君日記 (Ⅵ) (ページ27)

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私は、思わず目を閉じてしまっていた。

紫「ん、」

そう言って、

肩をすこしあげるから

私も自然を顔を上げた。

まだぼんやりした世界で

私の頬に

なにかあついものが触れた。

「え、」

そう思って

その場所を

指でなぞった。

気のせいかな、

そう思うことにして

紫耀くんを見ると

口をはむっとして

唇を隠してるみたいだった。

その顔があまりにも可愛らしくて

つい覗きこんでしまう。

そしたら、

......

ねえ、わざと、？

紫耀くんは

私が覗きこんだタイミングで

ちょうど振り返るもんだから

また、柔らかい唇の感触を

味わってしまった。

甘くてふわふわな味。

そんなの恥ずかしいに決まってるから

すぐに君の大きな背中に隠れた。

心臓の音を

波の音や風の音が

誤魔化してくれないから

これじゃ、聞こえちゃうじゃん、

と、私は少し焦った。

一方、紫耀くんも

耳を真っ赤にしてるから

照れてたんだなって....

さっきのはわざとじゃなくて

事故だったのかなって…

そう気づいた。

少し寂しいような、

ラッキーなような、

ちょっとジグザグした気持ちになった。

あれ、

そういえば、

私ってまだ気持ち言えてないよね

好きって言えてないよね、

また今日も言えずに終わるのかな、

でも、

好きですって言ったらいいのかな、

好きでしたって言ったらいいのかな、

です、

でした、じゃ、

全然意味が変わってきちゃうし

これからどうしたいか、

それも伝えたいのに、

伝えても叶わない、

叶えられない。

そう考えたら

言い出そうにも

言い出せなくて。

私はさっきまで感じていた

君のぬくもりと

さようならをして

紫耀くんの前に立った。

紫「どうかした、？」

「紫耀くん、

　あのね、

　今から言うこと、

　ちゃんと聞いてほしい、」

紫「聞くよ、」

「私ね、

　もう気づいてるかもしれないんだけどね、

　紫耀くんのこと、」

紫「うん、」

まんまるに開いた目に差し込む

澄んだ光が眩しくて

合わせていた目線を反らす。

でも、ちゃんといわなきゃ

そう思って顔を上げる。

「紫耀くんのこと、」

紫「待って、」

そう塞がれた台詞は

また明日に先送りされた。