君日記 (Ⅵ) (ページ25)

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紫「はい、これ」

と、渡されたのは

ビー玉だった。

「覚えててくれたの、？

　ありがと、」

紫「忘れる理由がわかんない笑」

「.....紫耀くん、」

紫「守り続けるよ、」

「えっ、」

紫「Aの好き」

「.......紫耀くん、」

紫「なんてね、笑

　はずかしい、笑」

「私だって、」

冗談なのかよくわからなかったけど

その言葉を

大切にしようと思った。

紫「あ、そうだ、

　ちょっとまってて、」

「あ、うん、」

そう言って駆け出していった紫耀くん。

追い風に背中を押されて

どんどん遠くにいく紫耀くん、

31日、

追い風だけは吹かないでよ、

そんな気持ちになった。

紫耀くんは

何か大きなものを抱えて

戻ってきた。

中を取り出すと、

ギター…‥？

紫「俺、最近練習してるんだ、

　だから、聞いてくれない、？

　君花夏。」

「君花夏っていうの、？

　あの曲、」

紫「うん、そう、」

軽やかな音から始まったメロディ。

「何回でも迎えにいくよ

君を知らない海は

僕の嫌いな夏だから

溶けたアイスだって

落ちきった砂時計だって

夏(きみ)を探していた

何回でも誘い出すよ

あの夏のわすれものは

僕を待っていたから

割れた貝殻だって

枯れ散った花火だって

君(なつ)のせいにしない

波をなぞって好きと伝えよう

もう一度が許されますように」

元々の曲は

高くて、儚くて、

心臓小刻みに揺らしてきた。

でも紫耀くんが歌うと、

もっと柔らかくて

優しくて

あったかくて

溶けちゃいそうだった。

丸い指先からは、

ごつごつの手が奏でていると思えないような

ふんわりした音色。

動かすたびに動く血管とか

息を吸うときの肩とか、

歌ってるときの喉仏とか、

何もかもが愛おしかった。

私は拍手するのを忘れて、

つい、紫耀くんの背中に

抱きついてしまっていた。