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それが覚めたときには、
麗しい太陽が私達を包み込んでいた。
だけど、それは
再び私達を深すぎる夢の中に誘い出す。
二度寝、三度寝、と夢を重ね、
気づいたときには
空は照れるようにオレンジ色に染まろうとしている。
夢で見た、見覚えのある後ろ姿は
一体誰だったのだろう、と
胸に空いた隙間に冷たい空気が忍び込んだ気がした。
それは早すぎる春の知らせだったのかもしれない。
そう思うことにしよう。
それにしても、今日の夕焼けは
どこか爽やかで、美しい。
いつかみた夢のような、
いつか願った空のような、
私の心を溶かしたみたいな空色。
そんな光に照らされて、
メイクをしたり、髪を巻いたりして
おめかしをする。
そんな私の様子を不思議そうに眺める飛貴に
少しというか、かなり照れながらも
準備を進める。
飛「なあどこに連れてってくれようとしてる？」
「内緒、」
言ってみたかった一言を
ディナークルーズのチケットを片手に握ったまま
言ってみた。
飛「じゃあ楽しみにしとく」
声は大人ぶってるけど、
頬は緩みまくっている彼がとても可愛らしいなって
私まで自然と口角が上がった。
部屋の鍵をかける音が今日も好きだな、
とか思いながら
小走りで駅のホームに向かう。
そんな中、
どきどきするね、なんて耳元で囁く彼はずるい。
私だけが知る行き先に導くって
こんな気持ちだったんだなと
去年の私の誕生日を思い出す。
雲の上で、さらに3ミリほど浮いているみたいな
そんな調子で一歩を噛み締めた。
懐かしい塩気を感じさせる風が
ふわっと私達を包む。
「今日は、ディナークルーズです、！」
楽しみよりも緊張が勝っちゃって、
ぎこちない言葉を並べた私は
夜景の細かな光よりも
もっとずっと燦然たる輝きが
飛貴の頬をつたるのがわかった。
飛「夢みたい、
夢だった、」
「現実、だよ？」
飛「ううん、
ここのディナークルーズ行くの、
夢だったんだ、俺」
「そっか、よかった」
飛「これ以上好きにさせんなし、」
「好きになってよ、」
飛「どうなっちゃうかわかんないよ」
「どうにかなっちゃえ」
こんなの初めてだよ、って
私の頭を優しく撫でる右手は
春のような心地がした。
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作者名：嶺花 | 作成日時：2021年4月29日 12時
