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そうして迎える朝は、
飛貴からの着信から始まった。
聞き慣れた音は
いろんな意味で私の心を大きく揺すった。
「あ、飛貴」
飛「ごめん、起こした？」
「起きた」
飛「わりいな、」
「全然いいよ」
飛「ありがと、
あのさ、」
「ん？」
飛「家行ってい？」
「え、いいけど、」
飛「じゃあ今行く」
そう、一方的に電話は切られてしまう。
どうしたんだろう、あんなに焦って。
不思議に思いながらも
とりあえずカーテンを開け、
膨れただけの蕾に目を落とした。
早く咲くといいな。
……それにしても、
外がこんなにもくらいのなんておかしいな。
雲が空全体を覆っている。
今日は少し遠出するはずだったのにな、
と、雨水のように
ポツリと浮かんだ不安で冷える。
握りしめたスマートフォンで
天気予報を開くと、
" 午後から大荒れ "
という文字。
ちょうどその時、
タイミング良くなったインターフォン。
飛「A」
「飛貴、天気予報見た？」
飛「見た、だから来た」
「え？」
飛「会えなくなる前に
会いに来た」
「そういうこと、笑」
飛「何笑ってんの、」
「そんなに焦らなくても、
行くか、呼んでたよ」
飛「俺が恥ずかしいだけじゃんか、」
「ううん、ありがと
入って」
飛「おう、
おじゃまします」
かわいいな〜飛貴、なんて
呑気に口に出してしまうほど
初めて私のペースに巻き込めているみたいで
少し嬉しい。
ただ、うかれた私の手をぐっと掴む手は
やっぱり胸を擽らせる。
なかなか見せてくれない頬は
きっと火照っているんだなと
緩む頬をそっと隠そうとしたら、
今度はその手も掴まれる。
飛「覚えとけ、」
なんてぶっきらぼうに発された台詞は
流石に心臓に響いたけど、
それでも今日は
ちょっとだけ立場逆転できる気がして
胸が浮ついた。
彼にはもちろん内緒だけど。
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作者名：嶺花 | 作成日時：2021年4月29日 12時
