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飛「じゃあこのままで」
そう言うと、
ポケットからスマートフォンを取り出し
それを私に向けてきた。
「あ、そういうこと？」
飛「1枚だけ、いい？」
「いいけど、でも、」
最後まで言う前に離された指先は
熱を帯びたままだった。
シャッター音は
光に吸い取られたかのように迷子になった。
飛「撮れた、ありがと」
「いえいえ、
でもさ、」
一緒に撮りたい、って言う前に
今度は強く手を引かれる。
勢いあまって頭がぶつかってしまった、と同時に
シャッター音が耳に届く。
飛「はは、変な顔、みてみ？笑」
「急なんだもん、飛貴、」
そう言うと、
繋いだ手を自分の胸に当てて、
飛「こうなる前に、したいことしてるだけ、」
と緩んだ口元が言った。
指先から伝わる振動と私の呼吸が
どんどん逸れていき、
夜空に飛んでいく。
私といてどきどきしてくれてたんだ、て喜びも。
舞い降りた感情は
「今日は帰りたくない、」
で、すでに口から溢れていた。
飛「ばか、本気にするだろ」
「…たまには本気にしてよ、」
煌々たる目の前の景色は
静寂すぎて、終わりを感じなかった。
今日だけは、覚めない夢をみたい、
冷めない景色を知りたい。
冷めない手のひらを君に添えたい。
もし、終わりを知るなら、
一緒がいい。
そう思った。
そんな気持ちを抱えたまま、
寒い車内に乗り込んだ。
暖房が効いてくるまで、と言って
エンジン音だけが奏でる空間は、
冬の裏側を知っているかのように静かだった。
私は、貰ったばかりのマフラーに
顔を埋めながら、
実は用意していたクリスマスプレゼントを
渡すタイミングを探していた。
今かな、
でもあともうちょっと、なんて考えている時間は
すぐに過ぎ去ってしまう事を知っていた私は、
ハンドルに手をかけ、
美しい世界を眺めたままのその左腕に
「はい、これ、」
と、腕時計をつけた。
飛「え、」
「Aサンタ、よりです、
メリークリスマス」
飛「ありがと、Aサンタさん」
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嶺花(プロフ) - 涼杜兄妹さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて幸いです！これからも涼杜兄妹様の毎日を少しでも彩れるような作品を更新できるようにがんばります。引き続き、花ことばをよろしくお願いいたします。 (2021年3月2日 6時) (
レス) id: 0b548f27c5 (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - お待ちしておりましたー！！楽しみにしております！ (2021年3月1日 22時) (レス) id: a89c13a921 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：嶺花 | 作成日時：2021年3月1日 21時
