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飛「前向いてください」
そんな、私の真似をした口調が
始まりの合図だったらしい。
目の前の景色は
魔法にかかったような、可憐で優美で綺羅びやかで
幻想的な世界に変わっていた。
東京ドイツ村の
世界中の光と色を集めた、
星の回収箱のような景色は
私の記憶に音を立てて刻み込まれた。
一刻も早くその世界の住人になりたくて
急いで車のドアを開けようとすると
飛貴に腕を強く掴まれる。
「え？」
飛「子どもか」
「子どもですけど」
飛「確かに、笑」
「いいじゃん、早く行こ」
飛「だから、これ、」
私の首元に薄柿色のマフラーが巻かれる。
長めのマフラーは
私の口元をすっぽり覆った。
飛「メリークリスマス、
飛貴サンタより」
なんて子犬のような顔で見つめて来たかと思えば、
マフラーを捲って
私の口元にほんの少し近づいてくる。
でも、触れないその距離に
胸の鼓動が急に早くなって、
「あ、あったかいよ、ありがと、」
と、ぎこちない言葉を並べた。
覚めない夢にいるようで、
不器用な話し方しかできなくなっている。
でも、
飛「良かった、」
ホットミルクのような優しい声で呟き、
指先を私の顎にあてる。
思わず口に力が入ってしまう。
その時、星の瞬きくらいの時間だけ
私の唇に視線を落とす。
だけど、その視線はすぐに窓を向き
誤魔化されてしまった。
私は、朧げな光を目印に
星屑を拾って歩く長い道を歩いているような
少し切ない感情に支配された。
抜けない余韻の乗り方が
未だにわからないせいで
飛貴の後ろ姿を見失ってしまう前に
袖元をそっと掴んだ。
そしたら、その上に優しく重ねて
再びポケットにしまいこまれる。
不意にあった視線は
瞬きを忘れたくなるほど、そらし難かった。
目の前に広がるのは無数に光だけではなく、
形も温度もバラバラで、
時にはフラッシュの眩しすぎる光も混ざっていた。
飛「ちょっと前歩いて、」
「え、嫌だって言ったら？」
私は、繋がれた手をぎゅっと握って
離したくないって、我儘を言ってみた。
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嶺花(プロフ) - 涼杜兄妹さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて幸いです！これからも涼杜兄妹様の毎日を少しでも彩れるような作品を更新できるようにがんばります。引き続き、花ことばをよろしくお願いいたします。 (2021年3月2日 6時) (
レス) id: 0b548f27c5 (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - お待ちしておりましたー！！楽しみにしております！ (2021年3月1日 22時) (レス) id: a89c13a921 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：嶺花 | 作成日時：2021年3月1日 21時
