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『美味しかった、』
不器用に発せられた台詞を
私は器用に返すことができず、
「あ、良かったです」
なんて、片言の日本語で返事をした。
『あ、ここのカフェ
一緒に行きたかったんだ』
「え？」
突然立ち止まるから、
勢い良く肩がぶつかった。
ごめんね、なんて言葉は
その台詞と混ざってしまって、そのままに。
『入ろ、』
手を引かれている訳ではないのに
引っ張られているような、
そんな不思議な感覚がした。
そのカフェは、
私が今まで入ったことのないような
大人な隠れ家カフェみたいだった。
中には大きなグランドピアノとスピーカー。
壁には不思議なアート。
昼と夜とでは
全く違った空気を纏っているような
どこか儚い雰囲気だった。
向かいに座る君の瞳は
やっぱり、少し苦かった。
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作成日時：2021年2月14日 23時
