甘さが、罪。 (ページ23)

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君の顔を見る余裕なんてなくなっちゃうくらい、
心臓が激しく高鳴る空間を
私は大切に抱きしめた。

時間、止まればいいのに。

そう考えている時間ほど
過ぎるのが早くて
気づいたら、
私の最寄り駅のアナウンスが流れてた。

君は、
そこが私の最寄りって知ってるくせに
その腕を離そうとはしなかった。

戸惑ったけど、
このままで居たいって気持ちが勝っちゃって
電車のドアが開くギリギリまで
その空間から出ることをやめた。

電車の速度が徐々に落ちる。

乗客の中で
降りる支度をする人が見える。

私も、そろそろ、と思って
鞄を持ち直したとき
更にその腕に力が入った。

だから、

「ありがと、

　じゃあまたいつか」

そう言って、腕が緩むのを待った。

だけど、
君は何も言わず
更に私の肩をぐっとひいた。

「私、降りなきゃ、」

『、乗り過ごしてよ』

急停止したような時間で
私はただ、頷いた。

『…ありがと、』

君のこんな不器用さが
一番好きだ、と感じる日が来ると
この時は全く思っていなかった。

ただ、
まだ一緒にいたいって気持ちが
重なったからだって思ってた。