甘さが、罪。 (ページ16)

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『寒くね？』

「ちょっとだけ、かな」

『もっとこっち来てよ』

ぐっとひかれた肩が
西野くんのと触れる。

おまけに、
手の甲も触れたり、触れなかったり。

『A、あったかくね？笑』

「よく言われる、笑」

そう笑い合いながらも
私はまだ、あれを渡すタイミングを探していた。

見慣れた道を歩き始めたとき
また私の鼓動は早くなる。

それとは反比例して小さくなる歩幅。

君とまだいたいって証拠。

体は正直だね。

今渡さなきゃ絶対後悔する、
そう思い立ってからは早くて

「西野くん、」

と名前を呼んでいた。

『ん？』

と、光が反射した夜の瞳が一瞬煌めきをみせた。

そこに無造作に紙袋を差し出す。

「あの、これ、西野くんに」

『え、俺？

　ありがと』

「ううん、

　わざわざ送ってくれてありがとね」

『流石に女の子一人で

　帰すわけには行かないっしょ』

「優しいんだね、西野くん」

『みんなに、じゃないけどね』

そっか、しか言えないのは
急に君が、胸を高鳴らせるから。

その勢いに任せて放った言葉は、

「私もこれ、みんなに、じゃないです」

貴方の感覚だけが散らばった、
美しく、どこか神秘的な瞳が揺れる。

淡く儚く堕ちた花びらのような時間が
甘い時を滲ませる。

曖昧な未来の予報は
あたるのかな。

このストーリーの続きは
もう一つの真っ白で甘い日引き伸ばされる。