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そう言って苦悩する名取先生にかける言葉がみつからない。
冴島「白石先生、秋本さん、意識回復してます」
秋本さんの管理をしていた冴島さんにそう声を掛けられ、私は秋本さんのベッドに移動した。
秋本さんはうっすらと目を開けていて対光反射を確認し私の声にもわずかに反応するのを見て冴島さんに頷いた。
白石「吐瀉物の中にカプセルが残ってた。完全に溶けきる前に吐き出したのが幸いだったわ」
そう言ってチラッと名取先生を見るとその不条理に唇をかんでいた。
なぜ男は助かってそれを助けようとした藍沢先生は目を覚まさないのか……
なんで……
名取先生がそう小さくつぶやいたのが聞こえた。
名取先生だけじゃない…私も内心は同じ気持ち。
きっと……私や名取先生だけじゃない……みんな同じ気持ち……
なんで藍沢先生が…?って………
秋本さんが目を覚ましたという連絡を受けてやってきたのは奥さんである美也子さん。
美也子「たぶん…絶望したんだと思います」
千葉国立大学神経科学研究所の主任研究員だった秋本さんはアルツハイマー型認知症の原因物質除去プロジェクトのリーダーとしてこの20年間新薬の研究開発に取り組んできた。
だけど、つい先日フィンランドの研究チームが開発に成功。
……先に特許を取得されてしまったのだ。
美也子「研究、成功したらたくさんの人を助けられるって言ってたんですけどね……」
悲しげにそう漏らした美也子さんの言葉を聞いていた私も藤川先生もやるせない思いで聞いていた。
その夜、当直の私はもちろん、緋山先生も冴島さんも家に帰ることはなく藤川先生、むろん名取先生もずっとICUで藍沢先生のそばに付き添っていたけど藍沢先生は目を覚ますことなく長い夜は明けた。
精神科での治療を受け問題ないだろうと一般病棟に移ることになった秋本さんが移動の際に渡り廊下から飛び降りを図ったという連絡が入った。
急いで初療室に駆け込むと緋山先生、藤川先生、フェローたちがすでに処置が始まっていた。
藤川「大量出血だ。かなり溜ってる」
白石「オペ室までもたないかも」
緋山「緊急開腹ね」
そう言う緋山先生の言葉にみんなが頷くと処置が開始された。
処置を開始したものの出血が多すぎてきりがない。
結局迷いに迷った末にダメージコントロールという療法でなんとか秋本さんの消えそうだった命を繋ぎとめた。
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明日香 - RULIさん» コメントありがとうございます!更新が中々出来ず、その上長くなってしまい申し訳ないです。ただてさえ長いのにまだ長くなりそうですが頑張って書いていきますので引き続きご愛読頂けると嬉しいです。 (2019年8月2日 7時) (レス) id: 9194933e72 (このIDを非表示/違反報告)
RULI - リクエスト、受け取って下さり、ありがとうございます、とても面白いです!流石だなと、おもいました!頑張って下さい! (2019年8月1日 20時) (レス) id: 8fa7ebfbfe (このIDを非表示/違反報告)
明日香 - ハートさん» コメントありがとうございます。読者の皆さんの応援が励みになっています。これからもゆっくりかもしれませんが更新頑張っていきますのでよろしくお願いします! (2019年7月24日 18時) (レス) id: 9194933e72 (このIDを非表示/違反報告)
ハート - 最新頑張ってください。応援しております (2019年7月24日 13時) (レス) id: f31ae08eec (このIDを非表示/違反報告)
明日香 - ぱやさん» コメントありがとうございます。学生のため平日は忙しく中々更新が出来ないのですが主に土日や長期休みは頑張って更新したいと思っています。更新速度が遅いですが暖かく見守って応援して下さると嬉しいです! (2019年7月12日 22時) (レス) id: 9194933e72 (このIDを非表示/違反報告)
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