トロイメライ

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dt.






離れたからと言って何もしないわけじゃない。
ちゃんと、見ておくつもりだ。




体調の心配だけじゃない。
阿部の纏うオーラが半端なく暗くて
近寄り難い雰囲気を出していたから。




貼り付けた笑顔、なんて俺には分からないけど
花が咲いたように笑った後の表情が
すごく苦しそうに見えて、いつになく怖いと感じた。





「阿部ちゃん」

「なあに、翔太」




俺の向かい側に座ってた翔太が立ち上がり、
スマホを弄る阿部に声を掛けた。




「これやる」

「あ、ラムネじゃん。ありがとう」




やっぱお前も気づく？
時々言われるんだ、
「ゆり組は時々阿部に甘い」って。




仕方ないじゃんね、
全部強がって隠す弟なんか、ほっとけるわけないでしょ。




ラムネを素直に受け取った阿部に、
「いや別に持ってただけだし」とかブツブツ言ってる翔太。耳、赤いよ。




「あれ、」

「なに、どーしたの」

「や、うん、
ごめん、気の所為…」




か細く聞こえた声に顔を向ける。
目をあちこちに泳がせたあと、
慌てたようにラムネを口に放り込んだ。




「ちょっとトイレ」




ドタドタと出ていった阿部に、
翔太と顔を見合わせて首を傾げた。

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