深夜廻-矢京- (ページ7)

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第四夜ページ7

やがて、花火は枯れた様に上がらなくなり、こだましていた音すら聞こえなくなった。

「……終わっちゃったな、花火。」

ケンタロウに向けてそう言うと、シゲルは立ち上がった。
帰ろう、と言おうとして、シゲルはケンタロウの方を向いた。

「……ケンタロウ？」

ケンタロウはジッと座ったまま、花火が消えた暗闇の様な空を眺めている。
その目に光が無いように見え、シゲルは少し、怖くなった。

「ケンタロウ！」

強めに名前を呼ぶと、ケンタロウはハッとしてシゲルの方を向いた。

「……帰ろう。」
「………おう。」

ケンタロウは立ち上がると、シゲルの隣に並び、ナップザックから懐中電灯を取り出した。

「……暗ぇし、懐中電灯付けんべ。」

そう言うと、スイッチをカチッと押した。
たちまち、目の前の足元が明るく照らされる。

二人は何も離さないまま、ケンタロウが照らす光の先を見て歩いた。

夕方はどこか幻想的にも見えた森が、夜になった今は、ただただ暗闇で侵食された森にしか見えなかった。

木や土、花の匂いに混じり、冷たい風が頬を撫でる。

「なんか……怖いな……」

隣でシゲルがポツリと呟いた。

「……だな」

ケンタロウはそれに答えるように、同じくポツリと呟いた。