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「智君、今日はもういいよ。お疲れ様」
「へーい」
俺が来てから、次々と客が帰って行く。
閉店間際だったのかと気づいた時、残っていた店員も俺に頭を下げて出て行った。
「あんたはいつ帰るの？閉められないんだけど」
───もう、誰も居ない。
Aが呆れた声で、エプロンを外して括っていた髪を解く。
もうイイ歳になったのに。いや、だから、かな……
そんな仕草に色気を感じて、俺は勝手に胸が高鳴る。
「いいから。座れよ」
「……何なの？偉そうに」
高くはない、だけど心にズンと一本入ってくるような……
あの頃、Aの声を毎日聞くのが、好きだった。
「俺、ずっと会いたかったよ」
「何勝手なこと言ってんの？皆心配してたよ」
「最初のうちだけでしょ」
「……潤？」
「あいつら、変わっちゃったなー！けど、Aは変わんないね」
「何それ？別に皆変わってないよ……というか潤が変わらなさ過ぎなの。わかる？」
あいつらだとムカつくけど。
Aには、いくらバカにされたって平気だった。
「すぐ帰ってくる、って？言ってたのはどこのどいつ？嘘つき」
「あ！ドイツも行ったわ」
「くだらない。何それ」
「最後はアジア回った。トムヤムクンがすげぇウマくてさ」
「あのね、そんな話聞いてないの」
Aは溜息をつく。
それはきっと俺のためでしょ？そう、解釈したかった。
「ごめん。早く帰るって約束破った」
「潤は、勢いばっかりだからね」
「うん。そうだね」
否定すればきっとムキになるくせに。あっさり認めても、不機嫌になる。
だけどそんなの気にならなかった。
俺はもう、Aとこれから一緒に居られる、居たいって思いだけで……
「これからどうするの？まさかまた海外戻るとか……」
「ここで雇ってよ！社員として」
「はぁ？いきなり何？知り合いは雇わない、やり辛いよ」
「だめ？」
「甘えてないでちゃんと働くとこぐらい見つけなよ」
「だから。Aがいいんだけど」
俺がせっかく、さりげなく気持ち出したのに……Aは再び溜息をつく。
友達に頼っていい加減だって？思ってんの？
だったらやっぱ、ちゃんと言うしかないな……
「潤。もっと自分のこと真剣に考えて」
「おまえに言われたくない」
「え？」
「アイツとは、縁切った？」
頼むよ、そうだと言って。これから俺が側に居てやるから───
「……潤？」
動揺なのか、Aの瞳が揺れる。
俺の喉は、からからだった。
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璃桜(プロフ) - 初めて読ませて頂いた作者の方もいて色んな作風が読めて楽しかったです。ゆったりとした雰囲気が儚くちょっと切なく感じました。またコラボの企画があったら読みたいと思いました！これからも応援しています！ (2016年12月12日 21時) (
レス) id: 18ebc3f5e6 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - reiさんのお話、ぐっときてしまいました。やっと自分の気持ちに気がついたのにすれ違いでもぅ会うコトもままならないなんて。後悔をして愛を知るなんて。悲し過ぎる。甘いお話も好きですがたまに涙して毒気を抜いてます。これからも楽しみにしています！ (2015年9月23日 14時) (レス) id: cc888f66ce (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - つむさんのお話大好きです。泣けてしまいました。また素敵なお話読むの楽しみにしてます！ (2015年9月23日 13時) (レス) id: cc888f66ce (このIDを非表示/違反報告)
かしゆか(プロフ) - この作品面白かったです！ところでつむさんに質問なんですけどパスワード解除したりはしないんですか？ぜひつむさんの作品を見たいのですが･･･ (2015年9月15日 0時) (レス) id: a67ea852ce (このIDを非表示/違反報告)
Ame(プロフ) - 5人の作者様のお話がそれぞれ重なりあってて、すごくおもしろかったです。感動しましたし、お腹いっぱいになりました。また是非このような企画があることを楽しみに待ってます！ (2015年4月23日 0時) (レス) id: 8bdb99006e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：tomyummy
x他3人 | 作者ホームページ：
作成日時：2015年4月2日 23時
