【約束のネバーランド】能ある鷹は爪を隠す

第八歩 ページ8

「そうだ。俺はママの狗として動いてる。」

「そっか！はい、レイの質問をどーぞ！」

「詳しく聞かないのか？」

「うん。僕は理由よりも結論が大事だと思ってるから」








壁に背を預け、今度は立ったままレイと向かい合う。









「Aは、毎日のテストでフルスコアを出さない。それは"出せない"のか、それとも"出さない"のか、どっちなんだ」

「うーん。それは両方だね」







嘘はついていない。








フルスコアにしようと思えば、あんなテスト簡単だ。








でも、フルスコアを出してしまったら"ヤツら"に俺の脳の発達具合を知られてしまう。









それだけは避けたい。









出せるけど、出さない。









矛盾しているようでしてない。









世の中って難しいよな。









「僕の聞きたいことは聞けたから、もう戻ってもいいかな？」

「あ、あぁ。」

「そんな不安そうな顔しなくていいよ。別に今日の話を言ったりしないし」







レイが感情を表に出すなんて珍しいな。








俺はレイの頭をポンポンと撫でた。






俯いていた顔がゆっくり上がり静かに目が合う。









「今日話したことはお互い秘密ってことで！いいよね、レイ！」

「あぁ」









ぎこちない笑顔を見た後、俺とレイは皆が寝ているか確認する為にランプを持って各部屋を回った。









最後の部屋を見終わった時、ふいに扉が開く音が聞こえ俺達は裏口への道を進んだ。







すると奥から、エマとノーマンが静かに入ってきた。









「二人とも、おっかえり〜！」

「おかえり。どうだった？」









ランプで照らされた二人の顔は、確実に行く前よりも窶れている。







「間に合わなかった」









ノーマンは一言そう言って、部屋へと真っ直ぐ戻っていく。








『間に合わなかった』割には手ぶらだ。









あの様子だと真実を知ったんだろう。









俺とレイは、互いに顔を見合わせた。







レイは、何も言わないけど何度も自分の手を呼び指す。







きっと二人が"手ぶら"である事を伝えたいのだろう。







僕は一つ頷いてから「僕らも寝ようか」と言って、それぞれの部屋へと戻った。









手ぶらということは、リトルバーニーはその場に置いてきたという事だ。









きっと明日からママの犯人探しが始まる。









「勝負の日は、もう少し先じゃないと」

第九歩→←第七歩

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す