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第十八歩 ページ19

〜貴方side〜

此処は何処だろう。







暗闇の中。







暖かい何かが俺の体を包み込む。









近くから聞こえる心臓の音は凄く早く、









懐かしい匂いが鼻をくすぐる。








遠くから聞こえる音は、なんだろう。









バタバタとリズミカルな音と共に体に伝わる振動。









俺は、暗闇から逃れたくてゆっくりと目を開けた。









眩しい光に目を細め、









次に俺の瞳に映ったのは、一人の女性だった。









荒い呼吸を繰り返して、









肩で息をしながら、必死な顔で走っている。









何一つ欠けることなく、今でも鮮明に覚えてる。









鳴り響くサイレン音。









後ろから聞こえる大量の足音。









追ってくる怪物。









女性は俺を抱いたまま、ひたすら走り続けた。









建物を出て、









森に入り、








身を隠した。









けど、追ってはすぐそこまで来ている。









女性は、俺を抱いたまま大きな木の幹に開いた穴に身を隠し、そっと微笑んだ。









『目が開いたのね。ごめんなさいね、怖いわよね』









優しい声で語りかけてくる女性。








『偉いわ、泣かないなんて。本当にいい子ねA』









柔らかな手が俺の頭を優しく撫でる。








でも、大量の"それら"は少しずつ、でも確実に此方に近づいている。









『今の貴方に話しても忘れてしまうと思うけど聞いて。こんな所で貴方を産んでしまって本当にごめんなさい。』







女性の声が震え始める。








『でも、残したかった。あの人との間にできた"宝物"を。もし、もしも、貴方にこの日の記憶を思い出す日がきたら、お願い、アイツらから・・此処から必ず逃げて。』







彼女は俺の頭や頬、首に順番に触れていく。









『貴方がその"選択"をした時、きっと"彼"が助けてくれる。きっと・・・・。だから、生きて。生きて本当の幸せを手に入れて。』








俺と同じ赤い瞳に涙が溜まる。








『頼りない母親でごめんなさい。愛してるわ、A。貴方は私にとって、私達にとって最高の宝物よ』








そう言って笑った女性の顔を今でも鮮明に覚えてる。







微笑みと共に流れた涙も、








強く抱きしめられた温もりも、









そして・・・・









目の前で怪物に殺られた、変わり果てた彼女の姿も









『愛してる』









その声も。全て

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設定タグ:約束のネバーランド , 男主 , 天才   
作品ジャンル:アニメ
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アニメしか勝たん - 頑張ってください。私はあなたの小説が大好きです。いつもワクワクとした気持ちで見ています。無理する事なく、ちゃんと休んでくださいね。 (2023年1月17日 14時) (レス) @page14 id: d82d2213ef (このIDを非表示/違反報告)
ほしの - 滅茶苦茶面白かったです。続きはもう見れないのでしょうか…この先が気になります!更新、何時までも楽しみに待ってます。 (2022年1月26日 8時) (レス) id: 3e0bb8035d (このIDを非表示/違反報告)
ヤイ(プロフ) - とても面白かったです!!!更新頑張ってください!!! (2021年2月22日 21時) (レス) id: a0cd87f974 (このIDを非表示/違反報告)
ノア - とても面白かったです!更新楽しみにしてます。頑張って下さい! (2021年2月18日 13時) (レス) id: b55d75de00 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうらり - めちゃ続いて欲しい…この後の展開が気になる、っ (2020年12月23日 23時) (レス) id: e0a13cc95c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユピノン | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年1月30日 0時

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