彼と同じ ページ41
「…貴方が、そんなことを思っていたなんて、何も知らなかった…ッ…」
彼は言った。自分は私のことをちゃんと見ていなかったのだと。見てもいないのに、ちゃんと気付いていないのに、自分の中ですべてを完結させて、私を定義付けて、護ろうとして、つまりそれは、私のことを弱者のように扱っていたのだと。そう言った。沖田隊長は、そう言ったのだ。彼に何か間違った酷い言葉を口にしたなら、壊れてしまうのではないかと、そう思ってしまうくらいに、悲しそうで、苦しそうで、泣いてしまいそうな顔をしながら、そう言ったのだ。私は、彼がそう言ってくれるまで、彼がそんな顔をするまで、彼がそんなことを考えていたことに気付けなかった。彼がこんなにも苦しんでいたのに気付けなかった。彼はあの飄々とした表情の裏に、こんな表情を隠していたのだ。
…それに気付けなかった私は、私が許せない。
…だから私は、彼に文句を言う資格も、責め立てる権利もない。
…私だって、彼と同じなのだ。
「…ごめんなさい、沖田隊長……」
「…A…」
視界が眩む。見据えた先の彼の顔がよく見えなくなる。あぁ、いけない、泣いていたらいけない。彼の声は戸惑っている。私は顔をうつむかせ、目をギュッと閉じて、涙を瞼の奥に引っ込めた。
私は、彼の悲しそうで、苦しそうで、泣いてしまいそうなその顔を、見つめていなければならない。そう思う。
「…でも」
と、彼は呟く。その声に顔を上げれば、彼は罪悪感にまみれたような様子で視線を落としていて。
「俺は違げェよ、やっぱり。俺は俺のために、お前の気持ち無視して、目を瞑ってだけだ。それに、」
沖田隊長は続ける。眉を寄せて、躊躇うように少しだけ口を引き結んでは。
「約束だって破りまくった。……最悪でィ、俺ァ」
何かを嘲笑うように、彼は渇いた笑みを溢した。それはあまりにも虚しく道場に響いていって、私の鼓膜を揺らした。それは小さな声だったのに、酷く激しく感情を揺さぶってくる。
…お願い。お願いだから、そんなことを言わないで。
「…でも、もしそうだったとしても、今は違いますよね…?」
「…ッ」
ちょっとだけ握る手の力を強めて、私は口にする。彼の手を包み込むには、私の手のひらは小さすぎて、無力すぎて、もどかしい。
「今は、私のことをちゃんと見てくれてる。私の気持ちに一生懸命向き合ってくれてる」
ほら、だって。
貴方の赤くて綺麗な目に、私の顔が映っている。私の意思を、貴方は見つめてくれている。
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樹里 - 今回も陽太くんかっわいいっ!!うちの弟もこうだったらなぁ〜 あと、全然関係ないんですけど、名探偵コナンに沖田総司っていう人が出ててめっちゃびっくりしました。ちょっとパクられたような気がしたんで、ソッコーでコレ読みました(笑) (2018年10月7日 18時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 樹里(元茉莉華)さん» 樹里さん!お久し振りです!コメントありがとうございます!いい感じのところですね〜私もここらへんは苦戦しつつも書けるときはとことん楽しんでいたので、うまいこと盛り上げられたらいいなと思います!着実に成長していく二人をお見のがしなく!(笑)頑張ります! (2018年9月26日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
樹里(元茉莉華) - ピピコさんお久しぶりです! なんかいい感じのとこですねっ!! 更新楽しみにしてます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヒタキさん» ヒタキさん!初めまして!ありがとうございます!いっぱい読んでださってるんですね…!すごく嬉しいです!何度も読み返してもらえるようないいお話が書けていたらいいなと思います!これからもドキドキワクワクして貰えるように頑張っていきます!! (2018年9月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ヒタキ - こんばんは!初コメさせていただきました。ピピコさんのこの小説本当に大好きで何回も読ませてもらっています!!いつもドキドキワクワクです。これからも応援しています^^ (2018年9月6日 23時) (レス) id: 130f1442ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年6月15日 19時