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務まらない ページ25

…けれど。

彼に当たるかと思われていた振りかざした竹刀は彼の竹刀によってまた止められてしまっていた。これは、いけたんじゃないかと思えてしまっていたくらいの一撃だったのに、やはり沖田隊長には敵わない。悔しくて顔を強ばらせる。けれど、汗が入ってしみた目に、それは映っていた。沖田隊長の表情が、僅かに揺らいでいたのが。私の一撃を受け止めた彼は、目を少しだけ驚いているように見開かせて、何かに驚愕しているようだった。予想だにしていなかった事態に直面した瞬間のような。思ってもいなかったものが目の前に飛び込んできたかのような。そんな表情。けれど、すぐに沖田隊長の反撃が飛んでくるので、その表情の意味を考えている余裕なんてなかった。それを、止めるのに精一杯だった。

また一度、激しくぶつかる竹刀の音が道場に響いた。その音で、ここが道場であることを思い出した。暫しの間押し合うような、鍔迫り合いをした後、私達は一旦竹刀を離してお互いに後方に下がった。私も彼も、息を切らしている。額に汗を滲ませている。そして、笑っている。彼はまだ余裕そうに笑っているから、私もそれに返すように笑う。正直なところ、笑っている余裕なんてあまりなかったのだけれど、そうじゃないと彼に更に笑われてしまいそうな気がした。

沖田隊長は小さく笑いを溢しながら、額に溜まった汗を袖でぐいっと拭っては言った。


「…は、思ってたより、中々やるじゃねェかィ」

「当然ですよ」


遠慮せずに、間髪いれずに、私は返す。肩で息をしながら。必死に呼吸を繰り返しながら。


「だって私は……貴方の部下ですから」

「…」


…真選組なのだから。一番隊の副隊長なのだから。当たり前だ。組織を護る剣の一人であるために。そして、彼のサポートをするために、私は強くいなければならなかった。副隊長とは、そういうものだ。上司のサポートをする。上司を支える。それが部下の仕事なのだから。一番隊隊長を支えるのが、一番隊副隊長の役目なのだから。

その役目を果たすための努力を、怠ることなんて許されない。自分がそんなことを許さない。


…私が強くなければ。上司の背中は護れないじゃないか。


「斬りこみ隊長である一番隊隊長の部下は、ただのちんちくりんじゃ務まらないでしょう?」


いつか彼は言った。私のことを、「ちんちくりん」だと。だから。


「私は、あれから強いちんちくりんになったんですよ」


あの時、貴方の刀に怯えていたあのちんちくりんな女は、強くなったんだと。そう言うように、口角を上げた。

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設定タグ:銀魂 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
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樹里 - 今回も陽太くんかっわいいっ!!うちの弟もこうだったらなぁ〜 あと、全然関係ないんですけど、名探偵コナンに沖田総司っていう人が出ててめっちゃびっくりしました。ちょっとパクられたような気がしたんで、ソッコーでコレ読みました(笑) (2018年10月7日 18時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 樹里(元茉莉華)さん» 樹里さん!お久し振りです!コメントありがとうございます!いい感じのところですね〜私もここらへんは苦戦しつつも書けるときはとことん楽しんでいたので、うまいこと盛り上げられたらいいなと思います!着実に成長していく二人をお見のがしなく!(笑)頑張ります! (2018年9月26日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
樹里(元茉莉華) - ピピコさんお久しぶりです! なんかいい感じのとこですねっ!! 更新楽しみにしてます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヒタキさん» ヒタキさん!初めまして!ありがとうございます!いっぱい読んでださってるんですね…!すごく嬉しいです!何度も読み返してもらえるようないいお話が書けていたらいいなと思います!これからもドキドキワクワクして貰えるように頑張っていきます!! (2018年9月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ヒタキ - こんばんは!初コメさせていただきました。ピピコさんのこの小説本当に大好きで何回も読ませてもらっています!!いつもドキドキワクワクです。これからも応援しています^^ (2018年9月6日 23時) (レス) id: 130f1442ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月15日 19時

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