【鬼滅の刃】教祖と薬師の話 其の弐

ある雨の日の出来事 ページ12

器具がぶつかる音、液体が混じる音
今日もいつもと変わらず、A自身の仕事である薬を作るために調合室に篭っていた


その中でぽつりぽつりと水音が混じる


この部屋でなっている音ではないので、調合室の襖を開けて外を見た

現在は黄昏時だからだろうか、雨が降っていた
天気雨だと思うのですぐ止むだろうと様子見をするが中々やまない


『(これは1晩中降るかなぁ)』


雨が降ると気温が下がるので今夜は冷え込むだろうと思い、早めに全て終わらせようと準備をする。

そして1つここにほぼ毎日のように訪れてくる鬼を思い出した




『(この雨だと傘さしても少し濡れるよね)』



そう思い拭くものを準備し始めた

今日来るとは限らないのに鬼のために無意識に世話を焼いていることに関してAは気づいていない




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『ふぅ…』


食事を済ませ、お風呂から上がる
今の時刻は亥三つ時なのでちょうどいい時間である

いつもの時間を考えればそろそろ来るだろう、と思いやる事を全て終わらせた


未だに雨はやまない
取り敢えず今は居ないので寝室に行こうと思い廊下の角を曲がり寝室の襖に手をかけた

開けようとしたところ、後ろから気配を感じる




すぐに後ろを向けば屈託なく笑う鬼がいた



「今晩〜Aお風呂上がり？」


へらっと笑っている鬼に対してAは固まった




『なんで傘さしてないの!?ちょ、とりあえず早く入って！』



それなりに強く雨が降っているというのに、童磨は傘をささずにここまで来たのだ

流石にAもこの状況には驚いた
縁側まで近づいてきた童磨手を引っ張り家に入れる






『阿呆なの？こんなに雨降ってるのに傘さしてこないなんて』


「わぁA、今日は積極的だねぇ！もっと近づいてもいいんだぜ！」



全く持って話が噛み合わない

しかし、童磨に言われて自分が無意識のうちに手を繋いでいたことに気付く



『間違えた…』


「えー離しちゃうの？もっと繋いでいようよ!!!」


『あ、遠慮しとく』


「即答は酷いなぁ」




なんてボヤく童磨を見上げるとぽたぽたと髪から水滴が落ちる



「あ、ごめんねぇ水かかった？」


『いや、大丈夫だよ』


「それなら良かった！」




そういい童磨は少し髪をかきあげた
その仕草がどうも様になっていた思わずじっと見つめてしまう



「ふふｯ…A、見惚れた？」


『なｯ…そんなんじゃない!!』


「惚れてもいいんだよ〜」





そう言って意地悪そうに笑った









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