77.成長 ページ31
焦凍Side
『あのねあのね、それでね、さんすうね、ひきざんもできるんだよ！』
登校中、一生懸命身振り手振りをしながら話すA。
懐かしさまで覚えるその様子に、俺は終始ほっこりしながら耳を傾けていた。
それと同時に、引き出しにしまった2通の手紙が頭に浮かんでいた。
――渡すタイミングは、焦凍に任せるよ。今日でもいいし、来週でもいいし、数年後でもいい。Aが大丈夫そうだなってときにお願い。
そのタイミングがいつなのか、どう判断すればいいのか、昨日からずっと悩んでいた。
Aのトラウマが良くなったときなのか、それともAが家族に関心を向けたときなのか。
じっと見つめていたからか、Aは首を傾げて言った。
『しょうと、つかれてるの？』
「いや、ただの考え事だ」
『かんがえごと？』
「……A、姉さんと夏兄に会いたいか？」
思わずそう聞いてしまった。
Aは『え』と声をこぼして目を見開いた。
俺はハッとし、慌てて「いや、何でもない」と誤魔化した。
だが、Aは少し考えてからはっきり答えた。
『……ちょっとだけ、会いたい』
「……！」
昔の二人を思い浮かべてるんだろう。
Aは寂しそうに微笑んでいた。
俺は正直驚いた。
少し前まで、家族の話――特に親父の話をしたときは何かしら拒絶反応を起こしていたはずなのに。
この短期間にも、Aはどんどん成長している。
俺もなんだか寂しくなって、Aの小さな手を握る手に少し力を入れた。
きっと、Aはこれから俺の想像もつかないスピードで成長していくんだろう。
そのとき、俺はAの隣にいられているんだろうか。
もしかしたら、そのときには――
「……A、今日寮に帰ったら渡したいものがある」
『わたしたいもの……？ わかった！』
もしかしたら明日にでも別れが来るかもしれない。
そう考えたら、悠長に悩んでる時間も無い気がした。
少し焦り過ぎかもしれないが。
Aはそんな俺の葛藤に気がついているのか気がついていないのか、キュッと俺の手を握って微笑んだ。
1日の授業が終わり、寮に帰った後。
Aは朝に俺が言ったことが気になるのか、どこかソワソワとしていた。
夕飯までは時間がある。
俺はAと向かい合って座り、預かっていた手紙を取り出して姿勢を正した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 283人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あや(プロフ) - めいめいさん» めちゃくちゃ健康的で何よりです笑 これから結構怒涛の展開になる予定なので、ぜひぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです！！ (1月10日 22時) (
レス) @page26 id: 021ff3b1be (このIDを非表示/違反報告)
めいめい(プロフ) - あ''ーマジ泣く これからの展開が楽しみ過ぎて夜しか眠れん (1月10日 22時) (レス) @page26 id: 19d12ec8ba (このIDを非表示/違反報告)
冬美(プロフ) - あやさん» 出来てよかったです！ (12月8日 17時) (レス) id: cc8a597751 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 冬美さん» 出来ました〜！！ 本当にありがとうございます…！！😭✨ (12月8日 14時) (レス) id: 6508c9a6a6 (このIDを非表示/違反報告)
冬美(プロフ) - たしか*←だったと思います！ (12月8日 10時) (レス) @page14 id: cc8a597751 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月木あや | 作成日時：2023年11月7日 20時
